シリアスマンのレビュー・感想・評価
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まじめな男
まずは彼のクラスにいる韓国人の学生が単位を落とされそうになり賄賂を渡すが、彼はそれを拒否したため父親が名誉棄損で訴えると言ってきた。息子は授業中にラジオを没収され、そこに隠した金も取られ、マリファナの代金を払えず困っていた。家では隣人が境界線を浸食し始め、彼の居候の弟が娘を困らせていた。挙句の果ては彼の妻から離婚を切り出された。しかし、再婚の相手サイは交通事故であけなく死亡。
登場人物はすべて一癖ありそうな者ばかり。その中でも主人公のラリーはきわめて真面目な男。だからこそ災難が降りかかっても対処できないでいるのだ。次々とラビに相談し、離婚や境界線に関しては弁護士に。そうしている間にもレコード会社からの督促、弟がギャンブルしたため警察の厄介になったりと、細かな災難が彼を苦しめる。神は何をしてくれたのか、ユダヤの一員になることに何の意味があるのか、などなどシニカルな切り口でまじめな男(シリアス・マン)を攻め立てるのだ。
結末はいかに?と思っていると、巨大竜巻注意報が発令されて、何も解決しないかのようなぶつ切りのエンディング。それでも永久在職はOKだったみたいだし、息子ダニーのラジオも成人式を執り行ったラビの手によって返される。しかし、連鎖的に多額の弁護士料の請求書が送られてきて、永遠に災難は続きそうだ。一つ解決したら、また一つ。彼が大学の講義で行ってる内容とも微妙に重なり合う。そして冒頭の寓話での悪霊であったのか否か、ということも講義の中に似ている部分があったし、数学では割り切れない、すべてはイメージの中にあるということか。
【”私を助けて。”真面目なユダヤ人大学教授の男に次々と降りかかる不幸な出来事を描いたシニカルコメディ】
■アメリカ、ミネソタ州のユダヤ人大学教授・ラリー(マイケル・スタールバーグ)は、平凡な毎日を過ごしていた。彼の願いは大学の終身在籍権利を得る事だけである。
そんなある日、彼は妻ジュディス(サリ・レニック)から離婚を言い渡され、ラリーの友人サイと再婚を考えているという。そして、何故か彼は家を追い出されるが、サイは突然事故死する。
それをきっかけに、ラリーの周囲で不幸が相次いで起き始める。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ラリーの同僚教授で、彼の終身在籍を検討する委員長の男がチョコチョコ彼の部屋を訪れ、彼の身の回りでイロイロと問題が起きても、”終身在籍は大丈夫だよ。”と言いに来る姿が、何だか可笑しい。全然大丈夫ではないし、終身在籍が許されるかどうか、微妙なのに。
・ラリーが、問題が起きるたびにラビに相談するのだが、最初は下級のラビに相談していたのが、徐々に上位のラビに相談していく様も、何だか可笑しいし、シニカルである。
・ラリーは、更に隣人から境界問題でもめ、教え子の韓国人学生からは落第点を与えた事に抗議され、彼の父親からは賄賂をチラつかされる。それを断るラリーが次々に起こる不幸にその学生の評価をFからCーに書き替えるシーンも、シニカルである。
・家にいついてしまった兄のアーサーは、かけ事を開いた事で警察に注意されるし、アーサーも上の空になって行き、交通事故を起こしたり、転がり落ちるように不幸の坂を一直線の描き方も、何だかシニカルである。
■挿入される挿話もナカナカで、特に歯医者が患者の歯の型を取った時に、歯の裏側に”私を助けて。”と何故か、刻まれているシーンは絶品である。
<そして、アーサーの机の電話が鳴り、医者から”直ぐに来てください。電話では言えません。”と告げられ、息子の成人式を終えたダニーが、学校から出てきた時に前方に現れる黒い雲のハリケーンを映し出すシーンで暗転するエンドも、ナカナカな作品である。>
性に合わない
真面目に生きたいだけの普通の男性に、次々と降りかかる不幸。
主人公ラリーの態度があまりに歯痒くて、コメディとして笑える(苦笑?)というよりはイライラするかも。
しかも、終わりが近づいてもまだまだ新たな不幸が現れ、金銭難から賄賂を受け取りそうになる描写と、深刻な病気の仄めかし、最後には大きなハリケーンが来て終了。
それぞれの不幸への手当てはなく、放置。
人生は不幸の連続ということ?
冒頭の妙な短編部分もちょっと理解し難い。
コーエン兄弟の作品はあまり性に合わないかも知れない。
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