劇場公開日 2011年10月8日

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夜明けの街で : インタビュー

2011年10月4日更新
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秋葉を演じたのは深田恭子。時効が迫った15年前の殺人事件の第一発見者となり、一時は容疑者扱いもされたという設定がミステリー色を増幅させている。愛くるしさの中に秘めた妖艶な魅力は、渡部を惑わせるには十分で、岸谷も初共演の“不倫相手”を絶賛する。

「派遣で来た、ただのきれいな人だったら2人は不倫関係になっていない。そこには神秘性があり、死んだ人間を見ている過去があって、それが事件の時効を迎える15年後に一瞬の輝きを放っているような、そういう不思議さの魅力みたいなものを深田さんはもともと持っていたと思うんです。ただ立って振り返っただけですごく不思議な魅力を放つ。その力が映画に出ていると思います」

撮影は横浜を中心としたロケが多かったが、秀吉を熱演していた「江」と時期が重なってしまった。それでも収録の合間の数週間、まとめて休みをとることで調整ができたという。秀吉と秀吉の間に渡部を演じる。集中力を維持するのは可能だったのだろうか?

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「時期が重なって作品をやることはまずないので不安だったんですけれど、頭の中の秀吉が全然違う“部屋”にいてくれたので、全く苦労しなかったですね。『江』の中の秀吉がすでにできあがっていたので、切り替えは楽だったとは思います」

だが、撮影が佳境を迎えた3月11日、東日本大震災が発生。その話題になると、思慮深い表情となった。製作サイドでは続行か中止かの議論が交わされたが、岸谷は主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成した1994年当事に思いをはせていた。ユニット名を決めようとしていたときに、阪神・淡路大震災が起きたのだ。言葉にもより力がこもる。

「被災地に大工さんや料理人が行って、皆が助け合っている。そのときに俳優はなんて無力なんだろう、僕たちは職業俳優として直接援助ができないという無力感に打ちのめされて、必要のない職業だというところまで落ち込んだんです」

だが、当時目にしたニュース映像が奮起するきっかけとなる。海外の戦地でがれきに映画を映し、それを負傷した兵士や市民が笑いながら見ているという光景に、勇気付けられたと述懐する。

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「僕たちは被災者の方に直接何かを与えることはできないけれど、心の栄養と笑顔はもたらすことができる職業だと。それで、僕たちは人間の心を豊かにできる、地球を豊かにゴージャスにできると開き直って立ち直れた部分もあった」

これが「地球ゴージャス」の命名の由来だという。以来、生み出したものを観客に還元していこうという姿勢はぶれていない。93年にスタートし、毎年12月1日に開催されるエイズ啓発のチャリティ・イベント「AAA(アクト・アゲインスト・エイズ)」の発起人のひとりとして活動を続けているのもその一環だ。

「僕らがつくったものを、お客さんが見て笑ってくれる、面白いと思ってくれる、考えさせられたと思ってくれるだろうから、今、頑張ろうと。僕らが人前で演じてお金をもらえることが、神様がくれたちょっとした才能とするならば、絶対にこういうときにきちんと使うべきだと思う。チャリティ公演をうち、お客さんに足を運んでいただき、それが少しでも助けになれば幸せです」

「地球ゴージャス」では、被災地の復興を手助けするイベントを企画しているという。そんな男気にあふれた思いが、観客を魅了してやまない所以(ゆえん)なのかもしれない。

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