劇場公開日 2010年7月31日

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「いつかは戻る宿命をほのぼのと描いた佳作」ちょんまげぷりん マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5いつかは戻る宿命をほのぼのと描いた佳作

2010年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

錦戸亮の立ち居振る舞いが様になっている。二本差しがよく似合う。時と場所をわきまえない子供と、それをしっかり叱れない親が横行する現代。毅然と叱り飛ばすシーンには胸がすく。
まったく異なる時代を生きることになった安兵衛と、彼に振り回されるハメになる親子の掛け合いは漫才のようで楽しい。キッチンのカウンターの向こうに、洗い立ての髪を下ろした安兵衛の顔だけが見えるカットは、どう見ても生首だ。(笑)
たしかにジャンルでいったらSFタッチのコメディーだろう。だが、中村義洋という監督は「チーム・バチスタの栄光」や「ゴールデン・スランバー」でも見せたように、人と人の繋がりの大切さを作品に盛り込むだけでなく、理不尽さの処理の巧さにほろっとさせられる。
超常現象としてのタイム・スリップは、本人の意志に関係なく突如としてやってくる。本人にとっては時代が変わっても生きる“今”があるが、回りの人々にとっては、もうその人と共に生きる“今”は存在しない。亡くなったのと同様の悲しみがある。
タイム・スリップして現れた武士・木島安兵衛は現代の生活にどうやって馴染むのか、その可笑しさとともに、いつまた超常現象によってこの場から消滅するかも知れない。いつかは戻る宿命、そんな不安定なきわどさを忍ばせて、一期一会的な人の出会いと絆を描いてみせる。ここでは、ともさかりえの等身大で気負いのない踏ん張りが功を奏していて、コメディーに人間ドラマとしての味付けがなされた。
見ず知らずの者通しが、心を開いて互いに情を通わせれば通わせるほど、別れがつらくなるが、果たしてこの物語の結末はどうなるだろう。和菓子屋の看板の紋が安兵衛の羽織のそれと同じものと分かったとき、ほのぼの感とともにタイム・スリップもののSF作品としても気持ちよく着地する。

現代人がどこぞにタイム・スリップする話はよくあるが、今回のようにほかの時代から現代に飛び込んでくるというのは少ない。ある意味、逆転の発想で、なによりセットやCGにおカネが掛からないのがいい。(笑)

マスター@だんだん