「使い古されたタイムスリップを逆手に取り、ホロリとさせてしまう展開が憎いです」メン・イン・ブラック3 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
使い古されたタイムスリップを逆手に取り、ホロリとさせてしまう展開が憎いです
3作目ともなると、勢いが落ちてくるシリーズは多いものです。どちらかというと前作までドタバタ調の本作は、それほど期待しないで見たのです。でもバリー・ソネンフェルド監督の演出は3作目にして、さらに歯切れよくなり、シリーズで一番の完成度となりました。小地蔵が評価したいのは、後半の思わぬ展開。
犬猿の仲にも見えて、それでもいつもコンビで活動している“J”と“K”の関係の絆の深さの秘密が、“J”がタイムスリップすることで明かされるのです。MIBの続編で涙ぐむシーンがあろうとは、本当に意外や意外、予想外でした。
こんな人情噺を挿入するなんて、ソネンフェルド監督は憎い奴です!
極悪エイリアンのボリスが月面刑務所を脱獄する冒頭から一気に引き込まれました。この冒頭の他、“J”がタイムスリップするため高層ビルから飛び降りたり、地球を侵略する鍵となるあるものを追って、異星人とまさに打ち上げ寸前のアポロ11号の発射塔の最上階で決闘したり、本作は3Dを意識した、手に汗を握るイナミックなシーンが多いのも特徴です。
このシリーズの面白さは、異星人を取り締まる秘密機関メン・イン・ブラックの“J”と“K”の丁々発止のやりとりに尽きるでしょう。それが大前提のシリーズなのに、何と今回は、“K”は40年前に死んでしまっていて、肝心な主役の一人が初めの方で居なくなってしまうところから物語が始まるのです。これまた、意外な意表を突く発想ですね。
このあとのシリーズを維持するためにも、何とかコンビを復活させなくてはいけません。“J”が選択したタイムスリップすること。そして過去に戻った異星人のボリスが“K”を殺してしまう前に、ボリスを始末してしまうことだったのです。タイムスリップなんて、ハリウッドでは余りに使いこなされたストーリーですね。
でも面白いのは、ボリスを追って1969年の世界に向かった“J”が、若き日の“K”と出会ってしまうこと。この若き日の“K”を演じるブローリンが、“K”ことトミー・リー・ジョーンズを若作りした雰囲気たっぷりなんですね。
苦虫をかみつぶしたような表情なんかそっくりです。ただ違っているのは、現代の“K”よりも少しばかり気さくでフレンドリーだったことです。年老いた“K”なら、“J”の冷やかしめいた質問にも無視で返すのに、若き日の“K”は生真面目に答えようとします。実は“K”が寡黙になってしまったのは、理由があったのでした。
“J”は、若き日の“K”の親しみやすさに驚き、ちょっと“K”のことを見直してしまうのですね。それはラストの感動シーンの伏線にもなっていました。
それでもやっぱり若き日の“K”とでも、“J”とのやりとりはチグハグ。なんで“J”は、場を持てあますと、どうでもいいことを、受け狙いでしゃべくり廻るのでしょうか。 そんな受け答えのバランスが絶妙で、まじめに演じるほどにおかしんですね。
また1969年当時のメン・イン・ブラックの施設もよく考えられていて、なるほどと思わせてくれました。登場した“O”も若くて美人。あんな容姿なら“K”がほの字になるのも無理ならざるところでしょうか。
後半、アポロ11号の打ち上げを背景にしたボリスとの攻防はやはり見応えありました。それにしてもアポロ11号の打ち上げシーンも、本物そっくりの打ち上げ映像を再現。決して手を抜かないのが、ハリウッド映画の凄いところです。
ところで前作でも話題となったマイケル・ジャクソンのカメオ出演。本作でもレディー・ガガ、ジャスティン・ビーバー、ティム・バートンその他にも様々な豪華キャストが出演しているらしいのだけど、いったいどこに出ているのでしょうか、全く気がつきませんでした。ティム・バートンはエイリアン役ではないとのこと。