「対話と繋がりと幸せ。」ソーシャル・ネットワーク ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
対話と繋がりと幸せ。
アカデミー賞最有力?といわれている本作。
予告を観てからずっとこれが観たくて、待っていた^^;
私は特にSNSに興味がないし、どっちかというと疎い。
ただ、そこでしか会話できない友人もいたりするので
(もちろん「Facebook」ではないけど)登録はしている。
IT用語連発の本作、詳しいとさらに楽しめるだろうな。
期待通りの出来栄え、内容もほぼ思ったとおりだった。
主人公M・ザッカーバーグの人となりを、彼ではなく、
のちに裏切られた親友・エドゥアルドらへの取材から
書き上げられた原作。本人は一切協力しなかったそう。
なのでマークの本意などはまったく描かれていない。
それどころか、これほど嫌な奴だったか、と思うくらい
徹底的に彼の欠点や弱点を焙り出し、その逆に次々と
湧きあがる才能を広げ見せる構成など非常に面白い。
冒頭で当時の彼女と会話(になってないけど)している
彼の口調から、圧倒的に他人とのコミュニケーション
能力を欠いていることが分かる。そしてその彼女に
「サイテー」よばわりされたのを腹いせに当SNSの源を
考えだすところなんかまるでお子ちゃま同然。大学生の
思いつきそうなことだ~と思いきり苦笑いしてしまった。
ところがそれが一晩でとんでもない成果をあげてしまう。
彼にとっては自身の才能を伸ばす原点が彼女への恨み
・嫉みというわけで、それがラストのとあるシーンまで
延々と続く達成への道のり、というのがさらに面白い。
だいたいこの「Facebook」って目的はそこだよねぇ?と
いうプロフィール構成などを見ても男と女がいればこそ。
この作品では女性から発する彼への一言が効いている。
冒頭では「性格が最低」終盤では「そう振舞っているだけ」
さて、どちらが本当のマークなんだろう??
私は語られるすべてが本当の彼なんだろうなと思うが。
今や「Facebook」は世界最大のSNSとして発展し、
彼は当時世界最年少の億万長者となったそうだが、
今だに家にも車にも服装にもまったく興味を示さず^^;
(映画の服装は実際の服装だそうで)
その巨億の富を自身で運用なんて気はまるでないらしい。
私も今作を観てまず思ったのだが、なんというか、
好きなことを好きなだけやれれば幸せなオタク魂全開の
ビジネス系でなく、技術職人系だな、このヒトはと思った。
だから古現実派のエドゥアルドとはまったく噛み合わない。
「広告はクールじゃない」という発想自体が彼そのもので、
ナップスター創設者ショーンの考え方に近いものがある。
しかし、ビジネスはノリで成功するほど甘くはない。
ボート部との一件にしても、端から彼は双子を相手にせず、
アイデアを実際に活かしたのは俺だ、お前らにできるか?
と言ってのける。彼にアイデアを使われ、ボートでは負け、
学長には軽蹴される双子があまりに哀れで^^;泣けてくる。
ちなみに一人二役だったそうだが、双子に見えた!すごい。
中盤以降は、双子と親友から起こされた訴訟シーンと、
過去の回想シーンが交互に流れるので、弱冠観辛くなる。
女性相手にズバズバ言いたい放題のことを言い、
自身を支えてくれた友人の存在すら損得でしか測れず、
利用価値があれば何でも使うが、礼儀恩義には不道徳、
パーティーなんて大嫌い(爆)、だけど自分の才能だけは
絶対だ!!と信じて疑わないあの性格。周囲のオトナを
黙らせるほどの弁舌を持ってしても、理解説得は不可能。
彼にあるのは豊かな才能とそれを利用するユーザーたち。
でもおそらく彼はそれでいいのだ。目的は達成したし(爆)
まるで扱いにくい子供を見せられたような作品だったが^^;
新米弁護士からの言葉を受けとり、彼が返した反省には
やっとそこから少しずつ、対話が成立していく予感がした。
人間同士の繋がりは、常にキャッチボールだ。
彼のネットワークがどうかリアルに拓けていきますように…
(日本ではFacebookが流行らないらしい。実名登録だから?)