「”優雅な人々の一員になった感想は? 自分のアイデンティティを得た今、次は何になるつもりだい?” Facebookの光と影を、鬼才フィンチャーが容赦なく抉り出す!」ソーシャル・ネットワーク たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
”優雅な人々の一員になった感想は? 自分のアイデンティティを得た今、次は何になるつもりだい?” Facebookの光と影を、鬼才フィンチャーが容赦なく抉り出す!
世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス「Facebook」の創始者、マーク・ザッカーバーグの半生を描く伝記映画。
監督は『セブン』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』の、名匠デヴィッド・フィンチャー。
主人公マーク・ザッカーバーグを演じるのは、『ヴィレッジ』『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグ。
ザッカーバーグの親友エドゥアルド・サベリンを演じるのは、『Dr.パルナサスの鏡』『わたしを離さないで』の、名優アンドリュー・ガーフィールド。
「ナップスター」の創設者ショーン・パーカーを演じるのは『ブラック・スネーク・モーン』『シュレック3』のジャスティン・ティンバーレイク。
双子のエリート学生、ウィンクルボス兄弟を演じるのは、当時TVドラマ等で活躍していたアーミー・ハマー。
ザッカーバーグの元恋人エリカ・オルブライトを演じるのは、『エルム街の悪夢』のルーニー・マーラ。
ショーンと一夜を共にした女子大生アメリア・リッターを演じるのは、当時ファッション・モデルとして活躍していたダコタ・ジョンソン。
ショーンのパーティーに参加していた男を演じるのは『ノーカントリー』『ラスト・エクソシズム』の、名優ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。
製作総指揮を務めるのは『ユージュアル・サスペクツ』『セブン』の、レジェンド俳優ケヴィン・スペイシー。
👑受賞歴👑
第83回 アカデミー賞…脚色賞/作曲賞/編集賞!✨✨
第68回 ゴールデングローブ賞…脚本賞/作品賞(ドラマ部門)/監督賞/作曲賞!✨✨✨
第82回 ナショナル・ボード・オブ・レビュー…作品賞!
第76回 ニューヨーク映画批評家協会賞…作品賞/監督賞!✨
第36回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…作品賞/脚本賞!✨
第16回 放送映画批評家協会賞…作品賞!
第64回 英国アカデミー賞…脚色賞/監督賞!✨
第36回 セザール賞…外国映画賞!
原題は「The Social Network」。ショーン・パーカーなら「the」は取れ!と言ったところだろう。
まずこの映画、世界最大のSNS企業「Facebook」の創始者マーク・ザッカーバーグを扱っているが、エンド・クレジットにもあった通りかなりフィクションを交えて描かれているようで、映画を観たザッカーバーグ本人は「基本的なところで間違っていることが多々ある。Tシャツのデザインとサンダルは忠実だったけどね」と語っている。
映画でのザッカーバーグは振られた元カノのことが忘れられない孤独な男で、彼女を見返すために「Facebook」を作ったように描かれているが、実際にはその時すでに妻プリシラ・チャンと交際していたようだ。このように、映画的な面白さを出すため、ザッカーバーグのキャラクター像はかなり脚色されていると思った方が良い。
とはいえ、元カノをブログで中傷したことや女の子のルックスを比べさせる「フェイスマッシュ」を作ったことは事実なので嫌な奴には違いないとは思う🌀
映画の構造が変わっているため、観始めてしばらくは、「ん、どういうこと?」となるのだが、観続けていれば「なるほど。この映画は法廷劇なのね」とわかる。
観客に陪審員のような役割を与え、ザッカーバーグが罪を犯しているのかどうかを判断させるという構造は面白い。
そのため、映画の決定的な場面、例えばザッカーバーグがウィンクルボスのアイデアをパクったのかとか、本当にエドゥアルドを陥れたのかとか、ショーン・パーカーの薬物使用を通報したのは誰かとか、そういうことはボカして描かれている。
何が真実なのかハッキリさせないというのは、フィンチャー監督の前作『ゾディアック』(2006)に通じるところがあるか。
洗練された映像、そして無駄のないストーリーテリングは流石。地味なお話を超一級のサスペンスとして成立させてしまうところに監督の凄みが現れている。
注目すべきは映画冒頭、ザッカーバーグとエリカの会話シーン。
5分くらいのシーンなのだが、ザッカーバーグのファイナルクラブへの執着や体育会系へのコンプレックス、上昇志向、無意識に他人を見下す性格、人の気持ちを理解出来ないサイコパスな一面が描かれており、さらに今後の物語の方向性をも指し示している。この辺りの演出のスマートさがすばらしい。
キャラクターも魅力的。
ザッカーバーグの天才特有の空気の読めなさ、エドゥアルドのいい奴ゆえの脇の甘さ、ショーン・パーカーの有能ゆえのクズさ、ウィンクルボス兄弟のエリートゆえの鼻持ちならなさetc。メインキャラクター全員のクズ人間加減には、逆に愛らしさすら覚えてしまう。身近にいたら絶対嫌だけど💦
最高だったのがエンディング曲!
まさかビートルズの「Baby, You're a Rich Man」を持ってくるとは!フィンチャーのセンスは最高である♪
確かにこの曲の歌詞はこの映画にぴったり。ちょっとだけ和訳を引用。
ーーー
優雅な人々の一員になった感想は?
自分のアイデンティティを得た今
次は何になるつもりだい?
ずっと遠くまで旅をしてきたのかい
目の届く限りのところを?
優雅な人々の一員になった感想は?
あそこへはしょっちゅう行くのかい
いろんなことがわかるようになるくらい頻繁に?
あそこでなにを見たんだい
目に見えないものは何も見なかった?
ベイビー あんたは金持ち
ベイビー あんたは金持ち
ついに金持ちの仲間入りしたんだね
全財産を大きな茶色い袋に詰めて動物園に隠しとくなんて
まったく気が知れないよ
ーーー
この曲はビートルズのマネージャーだったブライアン・エプスタインを皮肉った歌と言われており、同性愛者との噂のあった彼を揶揄する様に、ジョンがコーラスで「金持ちのユダヤ人ホモ」と野次っている。うーん酷い。
エプスタインと同じユダヤ人であるマーク・ザッカーバーグが、エリカに友達申請を送っている場面でこの曲を流すとは、フィンチャーからザッカーバーグへの半端ない毒気を感じる…。
たった7年前の出来事を映画化しようと思ったのも凄いが、この内容の映画をつくることを許したマーク・ザッカーバーグの寛容さも凄い気がする。こんなん観たら「Facebook」使う気なんてなくなるで。
映画公開時の「Facebook」登録者数は約5億人だったが、2024年現在の登録者数は約30億人と言われている。今の地球全体の人口が約80億人なので地球人の3人に1人は「Facebook」を使っていることになる。これはもはや世界征服なのでは?
…んで、ザッカーバーグさん。いつイーロン・マスクと金網デスマッチをしてくれるんです?