「大人も子どもも楽しめる、“善良”な大作映画」魔法使いの弟子 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
大人も子どもも楽しめる、“善良”な大作映画
J・ブラッカイマー製作、N・ケイジ主演の割にはあまり派手な宣伝もされていなかったような気がする本作。
群雄割拠の夏の大作の中ではあまり期待されていなかったんだろーか?と少々不安だったが、どっこい、観て損無しの楽しい映画に仕上がっていた。
張り子のドラゴンとの対決や『ファンタジア』から拝借したという大掃除のシーンなど見せ場は多いし、ブラッカイマーお得意のカーチェイスも、魔法を駆使してひと味違う面白さに。
小指サイズに折り畳めるデカイ本、写真犬、ゴキブリ合体、鏡の向こう側、底無し絨毯などなど……僅かにしか登場しない魔法もアイデア満載で楽しく、飽きさせない。
そしてキャラクター達もひとヒネリ加えられていて魅力的。
主演のJ・バルチェルを観たのは多分本作が初めてだが、あまりカッコいい顔とは言い難い兄ちゃんが最後、かなりカッコよく見えるからフシギ。魔法の才能だけに頼らず、自分が積み上げてきた技術も駆使して強敵に挑むクライマックスがなかなかに熱い。
N・ケイジは……N・ケイジっぽくて良いです(笑)。どんなVFXにも負けないすね、この人の存在感は。なんか顔見るとホッとします。
諸悪の根源であるモルガナはステレオタイプの悪党だが(演じるのは『サイレントヒル』での役柄が強烈だったA・クリーグ。つーか見た目そのまんま……)、メインの敵役である2人は単なる悪党に収まっていない。
A・モリーナ演じる敵の魔法使いは、邪悪ではあるが優雅でチャーミング。主人公達と対立する理由もなんだか人間臭い。その一番弟子は、師匠がいない間に売れっ子マジシャンとして人気者になり、現世を満喫しまくっている(笑)。
皆、肩の力が抜けた感じが良いですねぇ。
しかし監督のJ・タートルトーブって本当に良い人なんだろうなと改めて思った。
彼の映画の登場人物って基本的に善人が多くて、根っからのド悪党は滅多に出てこない。悪党も茶目っ気があったり、悪事を働く理由がちゃんとあったりする。展開がヌルイとか、毒が足りないとか思ったりもするけど、その優しさがこの人の良い所か。
お陰で今回も、大人も子どもも安心して楽しむことができる映画になっている。
『1000年以上続く善と悪の魔法使いの戦い』である割にはスケールがこじんまりしてる気がするが、最初から派手な映画を期待せず、気楽にサクッと観るくらいの意気込みでいればちょうど良いかな。善良な映画です。
<2010/8/21鑑賞>