「男女のギャップが激しく出てしまう作品です。女性なら感涙ものにゃんだけど…」愛する人 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
男女のギャップが激しく出てしまう作品です。女性なら感涙ものにゃんだけど…
邦題は誤解を招く付け方だと思います。原題が『Mother & Child』というように、代理母や養子を題材にした母性愛全開の作品です。試写会場では、多くの女性が涙ぐんでいました。
日本でもこれから公開の『ジーンワルツ』が同様の問題を扱い問題提起しています。一時の事情があるにせよ、お腹を痛めたわが子を手放してしまうのは、その後に大きな悔いを伴ってしまうのは致し方ありません。それでも小地蔵からすれば、堕胎して子供を殺し、水子霊として小地蔵たちが面倒を見ることになるよりは、生きてこの世で育てられるほうが、その子の魂にとって絶対にいいことに違いはありません。
劇中様々な私生児が登場します。登場人物たちは、よくぞ堕胎せずに産む決意をしたものだと、本作を応援したくなりました。
堕胎と臓器移植は殺人行為なのだと、無信仰な人たちにも悟っていただきたいですね。
さて映画の方は、ストーリーテーラーとして定評のあるロドリゴ・ガルシア監督だけに、前作の『美しい人』に続いて、本作でも仕掛けが施されていました。
主人公のエリザベスと、エリザベスを14歳に出産し、母親の反対で施設へ手放してしまった母親カレンとは、全く交わらずに、別々の人生が同時進行します。
さらにも別のもうひと組の不妊に悩む夫婦として、黒人女性のルーシーが登場し、養子縁組を決意し、教会の連絡でひとりの生まれたばかりの赤ん坊を引き取るまでが描かれます。
全く別々の三者が、それぞれの人生を歩んでいるところを描きつつ、ラストでガルシア監督は見事につないでしまうのです。まるで、パズルみたいな構成で、お見事!といいたくはなりました。ただ映画『白夜行』と同じくネタバレしないで、パラレルに3組の人生が同時進行する展開は、ちょっと状況を把握するのに苦しかったです。
またガルシア監督の脚本があまりに巧みすぎて、仕組まれすぎではないかと感じてしまいました。一番違和感を感じたのは、劇中登場するある妊婦の心境の変化です。ティーンズで身ごもってしまい、仕方なく生まれてくる子供を養子に出したのです。しかし、子供を手放してしまうと無性に、子供が恋しくなり、別な私生児を養子として迎い入れてしまうのです。それだったら、手放したわが子を何が何でも取り戻そうとするのが、母心ではないでしょうか。小地蔵がそんなストーリーに憤慨しているころ、隣の女性の観客の方は、母子の非常な別れのシーンに大粒の涙を流しているのですね。ここら辺で、男性の映画の見方と女性の映画の見方には、大きな違いがあるもんだと痛感させられました。
そして、その私生児こそ、エリザベスの産み落とした子供だったのです。何という偶然でしょう。エリザベスが何で子供を手放したのかは、画面で見ていただくとして、父親にも親権がある以上、養子を世話した教会は、父親が誰か調べ上げて、連絡をするのが筋でしょう。
そして、この時点になってやっとカレンは、生き別れたエリザベスの消息が気になり、教会を通じて手紙を送ります。14年間もわが子の消息に無関心な母親がいられるでしょうか?教会を通じて、里子に出した子供と手紙のやりとりが可能だったら、もっと早く手紙を出しているはずです。
このようにちょっとガルシア監督の脚本は、都合がよすぎるところが多かったのです。
ところで、本作の見所として、妊婦になるエリザベスを演じるナオミ・ワッツが、実際に妊娠していたので、特殊メーキャップなしに、大きくなった本物のお腹を露出しているところです。お腹を優しくなでるところは、さすがに演技を越えて、母親の慈愛たっぷりの表情を浮かべていました。
さて、妊娠するということは、当然その前にはセックスがあります。本作で登場するベッドシーンは、どれもかなり官能的です。ナオミ・ワッツも体当たりでそれを演じ、エリザベスの母親の愛情を知らずに育った満たされぬ葛藤を激しく表現していました。
男女差が激しくむ出てしまう本作は、デートムービーよりも、女子会として女の子同士で見にいき盛り上がる作品としてお勧めしておきます。