「木漏れ日に揺れる、ハンモック」おにいちゃんのハナビ ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
木漏れ日に揺れる、ハンモック
主にTVドラマの演出で手腕を発揮してきた国本雅広監督が、谷村美月、高良健吾を迎えて描く、純度100%の人間ドラマ。
初夏、穏やかな陽光がさやめく森の中、遠慮がちな夏の風に吹かれながら木漏れ日のハンモックに眠る・・・。そんな、大きな安らぎと気持ち良さに満ち溢れた作品である。
物語は、極めてシンプルである。実話を基に制作されたという本作は、観客の度肝を抜いてやろうという悪戯心だったり、こうやったら常道すぎますかねえ・・というひねくれた感情は徹底的に排除されている。どこにでもありそうな舞台、隣にいそうな人間を、私達がぽつっと口走りそうな台詞を持ち寄って描き出す。そこにある優しさ、力の抜けた柔らかさが純粋に、嬉しくなる。
主演二人の役者としての力、表現の繊細さを強く信頼した上での演出が光る。下手に小道具を散らかして物語を転がさなくても、二人が笑えば、一緒にいれば、それで良い。それが良い。この国本監督の強靭な自信が物語を支えて、観客がじっくりと浸れる世界が出来上がる。
相変わらずの宮崎美子の大仰な演技に多少、物語の爽やかな素朴さが乱れてしまうのが非常に残念ではあるのだが、そこはちょい役で爽やかに笑う佐々木蔵之助の格好良さに免じて許していただきたい。
小手先の最新技術だったり、まさかの大どんでん返しがないと、一流の物語とは評されない風潮がある昨今の映画界において、この真っ向勝負の明解さは、ただただ清潔で、新しさすら感じさせる。
田んぼだらけでも、田舎しか出てこなくても、きっと・・きっと、伝わる。この作品に触れて、どこかに置き忘れていた暖かい涙を、そっと、思い出して欲しい。
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