「男女逆転の社会ってどんなものなのかを見せてくれた」大奥 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
男女逆転の社会ってどんなものなのかを見せてくれた
総合:70点
ストーリー: 60
キャスト: 65
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 70
予備知識無しで見て最初は何がどうなっているのかよくわからなかったのだが、男女が逆転した社会ということらしい。男が徹底的に減少した社会ということらしいが、ここらあたりは原作を知らない人のためにもう少し状況の説明をしてほしかった。とにかくここで描かれる女性の支配者がいてそれに使える多数の美男子が控えているというのは、女から見て一つの理想の形であるのだろう。
ここでは男が貴重品になっているから女の代わりに男が体を売っていて、吉原にも娼婦ではなく男娼が並んでいて、昔の吉原同様に病気(梅毒?)らしき症状で苦しみながら死んでいく。こういう逆転の発想はよくありそうだが、貧乏家庭が息子を男娼として売ったり種馬のごとく子供作りに勤しんだりと、それを徹底している描写を取り入れているところが良く出来ている。こういう社会になるんだなと見せつけられて面白かった。
大奥は嫉妬心の渦巻く権力争いの場というが、男同士でもそれを如実に再現しているのもいい。また吉宗がケチ(倹約家ともいう)であり、経費節減のため容姿の優れたものには結婚相手もすぐに見つかるだろうと暇を取らせたとかという歴史的事実をしっかりと取り入れたりというところも、調査をちゃんとしていてただの架空の物語ではないなというのも好感が持てた。設定以外の物語の後半の流れはありきたりでたいしたものではないが、このような設定がどうなっているのかを想像しながら楽しむことが出来た。
美人だがきつめの顔をした柴咲コウが将軍というのはいい選択だったと思う。主演の二宮和也をそんなに美男子とは自分は思わないのだが、彼に自分の地位を脅かされて突っかかっていった鶴岡役の大倉忠義が妖しい美男子ぶりで、自分としてはこちらのほうが存在感があってずっと気に入った。
かつての三国同盟戦争のときはパラグアイの男の人口が極端に減少したらしいが、そのときはこういうふうに体を売る男とかもたくさんいたのかもしれない。そんなことをちょっと思った。