「柴咲コウがハマリ役」大奥 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
柴咲コウがハマリ役
世の中をまるまる男女逆転させた発想が面白い。
基本的には、紀州から迎えられた八代将軍・吉宗が自ら倹約を掲げ、八百八町の民のために気を配った政道を行った史実を基にしているが、男女が入れ替わるだけでこうも面白くなるとは、なぜ今まで誰もやらなかったのだろうと思わずにいられない。
太秦のセットとVFXを組み合わせて、当時の江戸の町を再現した映像は、ここのところ作品ごとに奥行きが出て良くなってくる。時代劇の江戸城といえば姫路城の映像を流用するのが常だが、本作はめずらしく姫路城ではなかった。というか、姫路城は大改修で使えなかった? いずれにせよ、そろそろ江戸城を多角的にCG化して、映画製作の際にレンタルで相互利用するシステムができてもよさそうな気がする。
柴咲コウの地味だが威厳のある衣装がいい。堂々とした振る舞いは、ほかに誰がこの役をやると言わんばかりのハマリ役だ。吉宗は女になってもやっぱり白馬で疾走するんだねー。TVドラマの音楽が聞こえてきそうで笑える。
音楽といえば、高らかに張りのあるオリジナル・スコアが耳に残る。きらびやかな旋律の影に憂いがある。
憂いという点では主演の二宮は合っているが、どうみても剣豪には見えない。姿勢が悪く、子供が上下(かみしも)を着ているようだ。刀を鞘ごと抜く仕草は使う手が逆だったり、どうも見ていてハラハラする。べらんめえ口調も背伸びした感じだ。
和久井映見がふっくらとして可愛らしい。顔は笑っていても、芯の強さを垣間見せる側近・加納久通にぴったりだ。佐々木蔵之介と玉木宏の脚が絡むシーンはちと硬さがあるが、ここはご愛敬だ。
「オス化女子」と「メス化男子」と囁かれる現代に通じる逆転現象。ここでも、女将軍吉宗は大奥にバッサリと事業仕分けのメスを入れる。