海の金魚のレビュー・感想・評価
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若手俳優の頑張りは伝わってきましたが「チェスト!」には及ばず
うん、よかったよ♪
だからA-をつけるけど、
『チェスト!』のほうが私的には面白かったかな
~~
『チェスト!』と
同じ鹿児島錦江湾が舞台です。
前作と今作の違いは・・・
主役 男の子:女の子
主役 別地域出身:鹿児島県出身
年代 小学生:高校生
主題 母性:父性
大会 遠泳:ヨット
陰の主役 松下奈緒:吉瀬美智子
こんな按配でしょうか。
前作と共通しているのは
メインとなる役者さんの
演技が若干拙いところ(苦笑)
だから序盤から
中盤にかけて徐々に慣れてもらう必要があります。
◇ ◇
〈 冒険には黄金以上の価値がある 〉
〈 楽しくて楽しくて余計なことを考えられなくなる 〉
前作と共通していたテーマは友情・人と人との繋がり。
前作との違いは、メインキャストたちがトラウマとして
心の奥底に抱えているものでした。この一部が母性→父性なわけです。
どうしても
『チェスト!』と比較してしまうのですが、
感動しながらも、イマイチ弾け切れなかったのは、
ヨットシーンの、少なさとリアリティが伝わりきらなかったことかと。
遠泳だと、単純に泳ぐだけなので、
頑張って、練習する姿や苦しむ姿を
プール、海と撮影地も多く、水泳は
身近な存在なので、演技も、表現しやすいと思うのです。
ところが、ヨットになると
天候ヒトツで撮影は左右されますし、
難しい操作をイチから学ばなければならず、
時間的制約からも、本物に近づく伸びしろにも限界が生じてしまいます。
主要キャストのみなさんは、
船酔いをしながらもかなり練習を
積んだそうですが、過去に“アメリカズ・カップ”みたいな
ヨットレースをミーハー気分で眺めていた小生からすると、どうしても物足りない。
頑張っているなというのは
痛いほど伝わってくるのですが、
それしか伝わってこないのが、逆に痛かったりもしました。
まぁ、ヨットの撮影は本当に大変だったようで
主要キャストのみなさんは陸のシーンになると、
人が変わったかのように生き生きとし始めたらしいですからね(苦笑)
◇ ◇
トラウマのエピソードは
設定を高校生にしたからかな。
人生経験を小学生よりも
長く重ねてきている分、
かかえてきた苦しみに奥行きがあって、
演技に荒削りな部分は見えましたが、
スクリーンからシッカリ伝わってきました。
まぁ、人によっては
ご都合主義過ぎと批判する人もいそうですが。
◇ ◇
あとクライマックスにある
ヨットのレースシーンですが、
ある程度、専門用語や駆け引きを
知っておいたほうが、より楽しめるかもしれません。
私、先に記したとおり
ミーハー気分で眺めていただけでしたので、
専門用語もわからなければ、そのプレイがどのような
アドバンテージをもたらすのか、駆け引きのシーンに
着いて行ききれず、ゴールシーンを迎えても、なんか
ポツンと置いてけぼりを食らったような気分になってしまいました。
☆彡 ☆彡
と、感想を整理していて
ここで、ある結論に達しました。
“ズバリ!『チェスト!』を観ていない人のほうが
純粋に今作を、もっと楽しめるに違いないぞ!!“
今作、これはこれで
良作には間違いないのですが、
比較対象作品がある分、どうしても・・・。
真夜中の海、
海から見る星空、
そしてあることを
するためにラストに訪れる場所
ヨットだけでなく、
素敵で、幻想的な風景も
数多く、盛り込まれています。
『海の金魚』
海にはいない金魚が、海に行ったとしたら・・・。
その答えは、作品の中で見つけてみてください(笑顔)
脚本に難はあるが、俳優陣とエキストラが頑張っている
私はヨット乗りなので、この映画の公開を待っていました。
ヨットの描写は結構いけてます。地元のヨット関係者が総力で協力されたようで、そのおかげだと思います。海辺のシーンで、俳優陣の背景で練習をしているヨット部の人達(エキストラ)の操船が上手です。普通の映画とは逆に、エキストラで出演している人の方が圧倒的に(操船が)うまいので、それを見る楽しみがあります。
ただ、ヨットを知らない人は、なぜ主役の女子高生(ミオ・キヨミ)たちの艇がスタート直後にペナルティを科されるのか、何のためにあんなに頻繁に方向転換を繰り返すのか理解できませんから、演出や脚本にもう一工夫あってほしかったところ。また、レース中のヨットを空撮するシーンがたびたびありますが、少ない予算をそんなことに使うより、スタート直前に狭い海域にひしめき合うヨットの大集団をヨットと同じ高さのカメラで捉えたり、水しぶきをかぶりながら疾走するヨットを船上カメラで捉えた方が安上がりでしかも迫力があったと思います。
俳優陣は頑張っています。特に主役の一人であるミオ役の入来茉里は笑顔が愛らしく、爽やかな雰囲気を醸し出しています。高嶋政宏は、若手キャスト達の芝居に奥行きと安定感を与え、映画全体を引き締めています。
ヘリー・ハンセンのおそろいのウェアもいけてます。ヨットを知らない人も、「ヨットって格好いい」と思ってくれそうです。
キヨミ達のヨットも、レースでライバルになるヨットも、女性中心のチームなのが嬉しい設定。この映画を見て、「ヨットって若い女性が多いスポーツ」と勘違いしてヨットを始める人が増えてくれたら嬉しいです。
ただ、塚田耕野の脚本は問題が多すぎます。
まず、ミオの台詞に多用される格言的台詞が芝居のリズムを壊しています。一緒に見た20代女性も
「聞いてて恥ずかしい台詞」
との評価。
ミオのヨットを漁港から追い出そうとする若い漁師達が悪役として描かれます。しかし、そもそもミオのヨットは不法係留であり、善悪が逆です。
天才ヨット少女という設定のキヨミは、ヨットのパートナーを意味なく怒鳴りつけるばかりで、単なる情緒不安定な少女に見えてしまう。
キヨミがディンギーヨットでチームを組んでいたセイコを死なせてしまったシーンもおかしい。足にロープが絡まって浮き上がれないのならロープを引っ張って引き上げればよい。ディンギーが転覆しているなら起こせばよい。しかも転覆している海は、鏡のようなべた凪・・・。べた凪の海でヨットを転覆させる天才ヨット少女???そもそもで言えば、ディンギーヨットの転覆はすぐに元に戻せるし、ディンギーヨットは不沈構造だから転覆しても沈没しません。慌てる必要など全くありません。
素人寄せ集めのチームが試合で強豪をなぎ倒し、というストーリーは楽しいですが、それには猛練習とか、素人の意外な特技が競技に役に立って、という理由付けが必要です。しかしこの映画にはそれがなく、なぜあんな素人集団が勝てるのか?という疑問符がつきまといます。
もったいないのは若手漁師のリーダーでミオに協力するヨウスケの位置づけ。彼は、ヨットチームではただの素人として描かれています。しかし漁師というのは、たとえヨット素人でも海のプロです。長時間にわたるクルーザーヨットのレースに必要な天候や潮流の読みができるヨット素人がいるとすれば、漁師であるヨウスケでしょう。もしも漁師さんがこの映画を見たら、漁師をバカにするな、と怒るのではないでしょうか?
以上のように、脚本の出来がよくなくて、残念な部分がいくつか目に付きます。しかし、俳優陣のがんばりと、エキストラとして出演している地元ヨット関係者の見事な操船、そして鹿児島の美しい風景が脚本の欠点をかなり補っています。
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