「素朴さが魅力」借りぐらしのアリエッティ かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)
素朴さが魅力
拙ブログより抜粋で。
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ファンタジー然とした小人目線での描写には目を見張る一方、作為的な盛り上がりに落胆を隠せず、トータル的には及第点といったところ。
ただ憎めないのは、新人監督らしく思い入れたっぷりに作品の随所から過去のジブリ作品への愛情が滲み出ているから。ジブリファンならいたるところでニンマリしてしまうこと必至だろう。
ストーリー的にはかなりこぢんまりとしたお話で、簡単に言ってしまえば、人間に見つかってしまったアリエッティ一家が引っ越していくだけ。
序盤は初めて人間の住む部屋へ“借り”に出掛けるアリエッティの目を通して、“巨人の世界”での冒険が描かれる。
これがなかなか圧巻で、人間にとってありふれた日常世界が、壮大なワンダーワールドと化す様はファンタジー映画らしい楽しさに満ちている。
単に視点の違いによる巨大な世界というだけでなく、そこで暮らす小人たちが人間の日常品を工夫して道を作ったり、冒険の道具に使っているという様々なアイデアの映像化が、些細なものから空想を広げた童心を思い起こさせ、このワクワク感はまさに「子どもの頃には見えた」世界だ。
しかしアリエッティと翔の交流に話が進み、人間の側に視点が移ると、途端に魅力がしぼんでしまうのが残念。
アリエッティにしても翔にしても、よかれと思ってしたことが厳しい現実の前で悲しい結末を招く。そういう教訓めいた流れ自体は若い二人の成長譚として充分納得いくのだが、小人を捕まえようとする家政婦のくだりが明らかに演出過剰で、この素朴なおとぎ話を破綻させてしまった。
家政婦を悪役に仕立て、無理矢理にサスペンスを盛り上げようとしたのが失策だろう。この作品世界の小ささから考えると、小人を捕まえようとするのも子どものいたずらぐらいでちょうど良かったように思う。
ちょっとグダグダになりかけた終盤、なんとか盛り返すのも、アリエッティたちが変にやり返したりするようなスペクタクルに走らず、ただ引っ越すだけという、小人という素朴な題材らしい“身の丈に合った”落としどころを選んでいるからにほかならない。