「スーパー娯楽作品。」スター・トレック イントゥ・ダークネス ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
スーパー娯楽作品。
前作に続いてJJの監督作品ということで、
ま~これもどれくらい前からだったか、予告予告の猛嵐だった。
今作も面白いのだろうと期待はしていたが
何といっても今回話題をさらったのは悪役の、B・カンバーバッチ。
2006年「アメイジング・グレイス」で国王を演じた時から巧いなぁと
思っていた俳優だったが、まぁハンサムとは程遠い(ゴメンねぇ)
名前も面白いうえ顔も面白い、善も悪もこなせるタイプの俳優だと
期待していたら、イギリスBBCのドラマ「SHERLOCK」で大ブレイク!
これはNHKで放送されてホントに良かったと思える傑作なので、
日本にもファンが大激増し、空港では物凄い出迎えだったとか。
そんな最高のヒール役を得て、乗りに乗った第二弾の開幕。
冒頭から凄い勢いで火山噴火~沈静までを一気に描いて見せる。
原住民たちが見てはいけない^^;エンタープライズ号を見た途端、
神の教典を捨てて(爆)、艦を神と崇めているのに大笑いしつつ、
直後に悲惨な事件が立て続けに起こされるため油断ができない。
緻密な脚本とスピード感が一体となって観る者をグイグイ引き込み、
カークが茫然とする一節目の悲劇までまったく息を突く暇がない。
アットホームな語らいと緊張感のリズムのつけ方が秀逸なところ、
旧作ファンが納得する箇所も多数取り入れて、魅力倍増にも成功。
やるじゃないの、JJ。
前作から続投のカーク艦長C・パイン。
若くて女たらし的なブルーアイズ(ゴメンね)に在りし日の猛々しさ
(いや知らないけど)を感じさせつつ、艦長の資質は十分に備わって
いることを証明してみせる決断力と行動力の素早さはピカイチで、
若いながらもなかなかの頼もしさを発揮、
こちらも続投のスポック副長Z・クイントが細かく助言する一コマの
これまたしつこい感が心地良い煩さのところへ、
ボーンズ、スコッティ、スールー、ウフーラ、チェコフ…といった
乗組員たちのキャラ立ちの発揮にも抜かりがない。
それぞれのドラマをそれぞれの立場でしっかりと描いているので、
彼らがどれだけ多くの働きをこなすか!が、体感できるほどである。
気の毒この上ないのがパイク提督B・グリーンウッドで(大好きなのに)
直前でカークとのやりとりがあるだけに、あそこは泣けてしまう。
感情のあるなしがテーマに関わるため、ここでスポックの無感情
(違うんだけど)を前面に出しながら、クロノスに降り立つ前の告白に
またジ~ンときてしまう…という構造枠の深いこと。
そして最強の敵J・ハリソン(カーン)カンバーバッチの無敵な存在感。
ドラマを観てきたファンにはこれが誰なのかすぐに分かるのだが、
圧倒的な強さを誇る「悪」が見せる涙に「愛」を与えるカークの決断には
いや、そうじゃないぞ、奴は。と思いつつもスポックすら逆らえない。
カークの意思を尊重しつつ、副長としての任務を着々と遂行する彼に
いや~いいコンビだわ、やっぱり。とニンマリ。そして走り回る他の
乗組員たちにも何て良い部下たちなんだ!(涙)と感心することしきり。
すべてがカークのために動いている艦の構成力に、羨ましさ大全開。
沖田艦長(他作でスイマセン、だって被るんだもん)じゃなくとも、
「いい艦だと思わんか?」といいたくなること必至。良い艦です、艦長。
多分そうくるよね?そうよね?と思わせるラストも期待通り。
スーパー娯楽作品としてクソ暑い日本の夏をスッキリ突き抜けた本作。
映画が大衆娯楽だと分かっている作り手にかかれば、この通りであると
最近公開された邦画の問題作(アニメ→実写)の問題点が浮かび上がり、
何で面白いものをつまらなくしちゃうかなぁと、気分イントゥ・ダークネス。
(やたら悩みがちな最近のヒーロー達。いつ戦うの?まだなのかい?)