「審判の日、もしくは宇宙戦争的ななにか。 このグチャグチャ感はもはや狂気の域。」トランスフォーマー ダークサイド・ムーン たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
審判の日、もしくは宇宙戦争的ななにか。 このグチャグチャ感はもはや狂気の域。
金属生命体”トランスフォーマー”たちの戦いを描いた『トランスフォーマー』シリーズの第3作。
前作から数年、オートボットは米軍に協力をしながら、ディセプティコンの襲来に備えていた。
航空宇宙産業の大手企業で働くサムは、ある時会社の同僚から謎の声明文を手渡されるのだが、その直後ディセプティコンによる襲撃を受ける…。
監督/製作総指揮はマイケル・ベイ。
◯キャスト
サム・ウィトウィッキー…シャイア・ラブーフ。
ロバート・エップス…タイリース・ギブソン。
新たなキャストとして、アメリカ合衆国国家情報長官のシャーロット・メアリングを演じるのは、『ファーゴ』『あの頃ペニー・レインと』の、レジェンド女優フランシス・マクドーマンド。
製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。
騒々しさの化身、マイケル・ベイが送る『トランスフォーマー』シリーズだが、本作の密度は度を越している。
なんたってシカゴの街が消し飛んじゃうんだから。『ターミネーター』or『宇宙戦争』かよ!!
一本調子なドッカンドッカンモクモクモクモクガッシャンガッシャンも、ついに来るところまで来たって感じで、もはやこれ以上はないんじゃないかというくらいにまで先鋭化されている。…ベイ監督は何か狂気に取り憑かれてらっしゃる?
とまぁまた管を巻いてしまったが、少なくとも本作の後半1時間は嫌いじゃない。というか普通に感心してしまった。
ディセプティコンの襲来により廃墟と化したシカゴ。
トランスフォーマーたちが死闘を繰り広げる、狂気の沙汰とも思えるカオスな状況下で、必死に汗をかきながらミッションを遂行する米軍たちの姿には手に汗握ったし、次々と倒れるビル群とその中を滑り落ちる人間たちの描写はパニック映画として極上。
確かにグチャグチャしていて誰が何やってんのかよくわかんないんだけど、それを補って余りあるパワーに溢れており、ディストピアSF映画として普通にとっても優れていると思います。
シリーズ3作目にしてようやく主立った活躍場面を用意してもらえたタイリース・ギブソン。
今でこそ面白ワイスピおじさんになってしまったタイリースだが、この頃はマジでセクスィー♪超カッコ良い✨
敵地に揚々と乗り込むタイリース演じるエップス。彼の勇姿を拝めるだけで、この映画観る価値あり。
トランスフォーマーたちのアクションも素晴らしい。
クライマックスにおけるコンボイvsセンチネルプライムの殺陣は、まさに最終決戦といった具合の迫力だった。
今回特に良かったのは、地面を掘り進む超巨大ミミズ型トランスフォーマー。このミミズくんが迫り来る迫力たるや筆舌に尽くし難し。ビルをぶっ壊すところなんかフゥー最高ぅ〜〜!!劇場で観ていればさぞ興奮したことでしょう。
というわけで後半1時間は普通に楽しかった。
…んだけど、前半90分がマジでつまらない。後半のインパクトに上書きされてしまい何も記憶に残っていないレベルの、しょうもないドラマが続く。
…おいサム。その女誰よ!!!???
共に世界を救った運命の女性ミカエラはどこいったのよ。
「前の彼女には振られちゃってさぁ」じゃねぇわ!!お前が勲章貰って浮かれてるからだろうが💢
んで勲章に惹かれたバカ女とくっついてヒモ生活って、そんな羨ましい…もとい不純な男女交際は認められません!
確かに、アクション映画のラブロマンス要素なんて不要だとは前々から思ってましたよ。ラブシーンが始まるたびに「げー🤮」なんて思っていたのもまた事実。
ただ、今作のこれはいくらなんでも叙情に欠けすぎだよーー💦「良いケツしたナオンが出てりゃオトコどもは満足するだろHAHAHAッ!」とベイは思ったのかも知れないが、最低限の手続きは踏んでくれないですか。いくらセクシーなナオンが出てこようが飲み込めないもんは飲み込めない。
その一件に目を瞑るとしても、あまりにもドラマとして退屈すぎる。目玉であるシカゴ決戦への前フリがなんで90分もあるんだよ💦短めの長編映画一本分もの尺があるのに、何をやっていたか全く覚えていない。
前半が長すぎるせいで集中力が途切れ、せっかくの後半を100%楽しむことが出来なかった。もっと短く出来ただろ絶対っ!!
「月の裏側」というミステリアスな場所がお話に大きく繋がってくるのね、と思っていたらそのことは最終的にはあんまり関係なくなっちゃう。んじゃなんなんだよこの仰々しいサブタイはっ!『3』でいいだろ!
オートボットが米軍に協力してるというのも…。
自由=アメリカという図式を生々しく描きすぎ。いくらなんでも中東の戦場にトランスフォーマーが介入するのはいかんでしょ。そんなことしてるからシカゴがヤバいことになってもどの国からも応援が来ないんだよ。
ベイのトチ狂った愛国魂にはコンボイすらも首を垂れるのです。
あと、今回も時間配分がおかしい。
本作でようやく、1作目から続くメガトロンとの因縁に方がつく訳ですが、いやその最終戦雑じゃね!?
前作のフォールン様も1分くらいで殺されてたけど、今回のメガトロンは30秒くらいで瞬殺されてたぞ!!
しかもこいつの全く意味のわからん暴走のせいで結局ディセプティコン側が敗北することになっちゃうし。
前半のクソつまんねぇ人間パート減らせば、いくらでもコンボイvsメガトロンに時間を割けただろベイっ!そういうところだぞベイ!!
前半90分をほぼカットし、いきなりシカゴパートから映画スタート。
主人公はロバート・エップス率いる特殊部隊チーム。
これなら死ぬほどどうでも良いサムと今カノとのラブロマンスもカット出来るし、上映時間が長すぎて頭がクラクラすることもない。いい事ずくめ。
シカゴ決戦に重点を置き、上映時間を100分くらいに収めていればかなりの名作になったはず。色々と勿体ないなと思ってしまいました。
アカデミー賞/エミー賞/トニー賞を制覇した大女優フランシス・マクドーマンドさん、貴方みたいな人がこんな映画に出ちゃダメですっ!!