「「オスカーなんてクソ食らえだ!」そんな西部劇。それがコーエン兄弟。それでイイのだ」トゥルー・グリット 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
「オスカーなんてクソ食らえだ!」そんな西部劇。それがコーエン兄弟。それでイイのだ
腕っ節は強いものの飲んだくれで頼りない保安官(ジェフ・ブリッジス)と、何かと「訴えてやる!」とダチョウ倶楽部ばりに連呼しては強がる少女(ヘイリー・スタインフェルド)との毒舌たっぷりな皮肉の応酬に、故郷テキサスを馬鹿にされると怒り出すガンマン(マット・ディモン)が加わり、滑稽で人間臭い会話劇が膨らんでいく展開は、コーエン節が健在していて、ファンとして嬉しい。
往年の正統派西部劇を彷彿とさせる壮大な見応えとマカロニウェスタンのドライな暴力描写が融合された不思議な西部劇の味わいを放つ。
時代劇で例えるならば、昨年の『十三人の刺客』に似た衝撃と云えよう。
しかし、そのクセの強い味付け故に全キャラクターに感情移入できず、盛り上がるまでのエンジンが遅れたのが悔やまれる。
そういうツカミの失敗が審査での明暗に繋がったのかなと今作の後味の悪さにふと思った。
でも、人間なんざぁ簡単に死ぬし、簡単に殺し合うバカバカしい生き物。
だからこそ愛しい生き物とも云える。
そんな悲喜こもごもをエンターテイメントとして投げ抜く破壊力こそコーエン兄弟の持ち味なのだから、賞を逃したのもそれはそれで運命なのかもしれない。
では最後に短歌を一首
『荒野吠え じゃじゃ馬駆ける 銃の風 勇気撃ち抜く 天罰の穴』
by全竜
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