「話し相手のロボット・ガーティが泣ける……。」月に囚われた男 aotokageさんの映画レビュー(感想・評価)
話し相手のロボット・ガーティが泣ける……。
低予算で作られているので、主な舞台は月面基地内で、登場人物もたった一人で採掘管理業務に従事してる主人公のサムだけ。
特撮も昔ながらのミニチュア模型を使ったものだし(一部CGも使ってるらしい)、基地内部や月面作業車、話し相手のロボットなどの造形デザインも70、80年代のSF映画を彷彿させる。(これは監督が意図的にオマージュしたという)
しかし、安っぽさは感じない。映像的には過去のB級SF作品に見劣りしないか!?
3年の契約期間を終え、妻子の待つ地球へ帰還する直前のサムは作業中事故を起こしてしまう。基地内の医療ベッドで目覚めたサムは、以来幻影に悩まされる。自分以外の人間は、ここにいるはずはないのに…。
サム役のサム・ロックウェルのほとんど一人芝居の演技が見事。
それに「2001宇宙の旅」のコンピューター・HALを反面教師にし、ロボット三原則に忠実な話し相手のロボット・ガーティが泣ける…。
(以下、ネタバレあり)
…低予算のため、舞台を月面基地内にし、登場人物も宇宙飛行士一人だけにしてる。
そういう制約の中で、主人公に一人二役をさせながら、うまく物語を作り上げていると思う。(一人二役の場面は、画面を半分にして、後でつなぐ昔の撮影方法のように見えるが、わざとそう見せているのであって、実は最新のコンピューター処理をしてるのはではないかとも思う)
サムが医療ベッドで目覚めてからの異常は…もしかしたら、事故にあったサムが、閉じ込められたまま見ている夢なのでは?と予想した。
死の間際の人間は、自分とそっくり分身を目撃するという。(これはドッペルガー現象といわれる)
最初はわざと、サムの見ている幻想のように思わせていたのでは?
終盤で、クローンだったと種明かしするけど、その後も三人のクローンの役割分担で、ほろっとさせる。
2番目のサムが事故で負傷し死にかけてる1番目を地球へ帰還させようとするのを、もう長くないと悟った1番目が死体として事故現場に戻ることを申し出て、2番目を帰還させ、これから目覚める3番目(死体役にするつもりだった)の命も助けるなど、はじめは対立していたのが、最後には同士として譲り合うところは泣けた。
サム役のサム・ロックウェルの一人二役の演技もうまい。