劇場公開日 2010年5月22日

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「人生の「春」を探しに行く旅」春との旅 ikuradonさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人生の「春」を探しに行く旅

2010年6月3日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

小林政広監督は、映画作りに貪欲である。近年、「バッシング」「愛の予感」「ワカラナイ」と話題作が続き、今回の「春との旅」。このラインナップをこのペース、貪欲じゃないと身がもたなそうだ。

 小林監督は人物を、まずは歩くことと食べることで描写しようとしている気がする。歩き方と食べ方。確かにその人柄がよく出る行為なのだ。忠男の歩き方、春の走り方。これは最初から最後まで延々と繰り返される。それが人間の生命の営みなんだもの、仕方ない。このシークエンスを眺めているだけで、これまでの二人の人生がみずみずしい映像となって頭に浮かんでくるような感触を味わう。この演出、描写力が作品の揺るぎない柱となっている。見事。

 奇をてらうこともなく、ひいき目でもなく、批判するわけでもなく、カメラはひたすら2人を追い続けていく。このカメラ(視線)に耐えられるのが、仲代達矢なんだ!と思った。そして徳永えりの芝居も想像以上にかなりいい。イラつき、憐れみ、思いやり、焦燥、慈しみ、それはもうぐちゃぐちゃの感情が入り乱れる旅なのだ。国家にも政治にも世間にも干渉されない、2人だけの旅。生活がかかっている旅。出会う人、すれ違う人は多けれど、やっぱり2人だけの旅。人生の春を探しに行く旅。

 「ワカラナイ」に続き、音楽がいい!

ikuradon