「あれだけ切られて、まだ??」必死剣鳥刺し penguinさんの映画レビュー(感想・評価)
あれだけ切られて、まだ??
「隠し剣鬼の爪」が面白かったので期待してこちらも拝見しました。
冒頭まもなく主人公がいきなり屋敷内で剣を使って人を斬るところから始まり、彼が只者ではないことを示唆するシーンと言えますが、みなさんがおっしゃる通り、主人公である豊悦さんの上半身が剣の達人である体ではまるでないので、この人が剣の達人であるということは後半まで理解してませんでした。2回もお風呂のシーンがあるのですから、やはり豊悦さんには剣の達人であるべき肉体であって欲しかったし、映画の中でもそれを彷彿とさせるシーンがほしかったです。
時代劇として、ふすまを開ける所作などはよかったですが、昔の時代劇には家に上がるときに足を拭く場面があったり、身分の高いご別家様あたりには必ずお付きの人くらいいたと思うのですが、まったく一人で殿のお屋敷に向かったり、ストーリーとは直接関係ありませんが、そういう細かい点が手抜きされている感じがしました。時代劇とはストーリーも大事ですが、そういった「間」というか、ちょっとした風情も楽しんだり、リアリティも大切だと思うのです。
また、ストーリーとしてはラスト近く、主人公が上司である岸部一徳に秘剣を使って殿を守れと命令されたあと、彼を慕う姪に「必ず迎えに行く」と言ったのは矛盾する気がしました。秘剣を使わずとも「ご別家様」に勝つことができると思ったのでしょうか??
それにしてもラストの斬り合いはいくら見せ場とは言え、どれだけ斬られてもなかなかこと切れない主人公が超人過ぎる。それまでに斬られた人達があっさり死ぬのでその差が際立ちます。それだけ彼の腕が良く、周りが下手ということ??あと血が噴き出しすぎ。
主人公と姪の一夜のシーンは不要とも思ったけれど、主人公との約束を待つ姪と彼との一粒種の赤ちゃんとのラストが生きてくるのでありかと思い直しました。「四十七人の刺客」のラストを思い出しました。