武士の家計簿のレビュー・感想・評価
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目のつけどころがいい!
武士もサラリーマンと同じなんだなぁ〜というのが印象。現代にも通じる借金対策は見習うべきかも?
磯田道史原作のベストセラー「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」を、森田芳光監督が映画化した異色時代劇。
朝の連ドラのような出来
刀ではなく算盤を武器に仕える下級武士『御算用者』に着目したテーマは興味をそそる。
貯蔵米の計算が合わないと、辻褄が合うまでとことん追求する算盤馬鹿の直之。お駒(仲間由紀恵)との間にできた長男・直吉が4歳になって“着袴の祝い”の祝膳では、経費を節約するため鯛の塩焼きの代わりに“絵鯛”を並べる。困惑する親戚・縁者の表情に笑えるが、一度決めたら恥も外聞もかなぐり捨てて事を実行する直之の芯の強さがよく出ている。愛用の品を手放したくないと駄々をこねる母・お常(松坂慶子)も可哀そうやら可笑しいやらで、さあこれからどうなる?と見入るのだが…。
事業仕分けもやるならかくあるべしと謳ったところまでは良かったが、その後、猪山家の家計がどうなったのかが今ひとつ不明である。倹約の数々は笑いを誘うが、その結果を知りたい欲望を満たしてくれない。
たしかに長男・直吉は新しい時代に於いて、頭脳を使う役目で軍の中枢に昇りつめ、猪山家安泰という未来が待つ。だが、本作のテーマは“入拂帳”を元にした家族物語のはずで、直之を中心とした倹約とその成果に対する期待と、猪山家の行く末とは次元が違う。
最近の森田芳光監督、相変わらず着眼点は面白いが、切り口が少し甘くなったような気がする。
堺雅人と仲間由紀恵がなかなか年老わない。メイキャップするものの予算を掛けた映画というよりは、朝の連続テレビ小説を見ているようだ。
堺雅人が出る作品は、観た直後よりも、日が経ってじわじわと良さが伝わってくるものが多い。だが、今作に限っては少し物足りない。眼に浮かぶのは、駄々をこねる松坂慶子、右往左往する中村雅俊、どっかと根が生えながらも愛嬌のある草笛光子らの掛け合い漫才のような日常だ。そこだけなら★4つだ。話を欲張って、堺雅人を活かすどころか殺してしまった。
本物の侍
「そろばんバカ」の猪山直之(堺雅人さん)の真っ直ぐな生き方は、見ていて気持ちが良かったです。
江戸から明治へと時代が変わる乱世の中で、彼は見事に家を守り抜き、息子にその会計術の全てを授けます。
家に借金があると分かり、売れるもの全てを売り払い、倹約して借金を返していく様子は、
大変そうだけど明るかったなー。
仲間由紀恵演じる直之の妻、お駒が、直之に「(倹約生活は)辛くはないか」と聞かれて、
「貧乏と思えば苦しいですが、工夫だと思えば、楽しいです」
みたいな意味の事を言うのですが、それが何となく印象に残りました。
この夫婦の雰囲気は、本当に微笑ましいものがありました。
出会いから、苦楽を共にし、共に老いていく姿が、とても羨ましかったです。
(堺さんファンだから仲間由紀恵に嫉妬したということではなく笑)
息子が生まれて、袴着のお祝いの席で、食事に鯛が出せず、普通の焼き魚の前に鯛の絵(お駒が描いたもの)が置かれた膳を親戚一同で囲む姿は、ハラハラしたけど面白かったです。
色々と苦難は耐えませんが、それでも猪山家の人々は絶望することなく日々を生きていきます。
真面目すぎるほど真面目な直之に呆れながらも、一緒に借金返済のため協力し合ってがんばる猪山家の人々は、茶目っ気たっぷりで、質素な生活もなんだかコントに見えてしまいました。
ただ、直之の父(中村雅俊)の葬儀の夜も、葬儀費の帳簿を付ける直之の背中に「そろばん侍だから?」と問いかける息子の直吉は、とても悲しそうで、胸が痛かった。
でもこの場面は、最後のとても重要な締めの伏線となるのです。
それから、家の借金を返す途中の倹約時代に、直之が幼い息子に四匁の過不足も許さず、ひろった銭を夜中に河川へ戻しに行かせるシーンは、あまりにも厳しすぎるのではないかと思いましたが、それが、刀ではなくそろばんが武器である猪山直之にとっての譲れない矜持だったのだと今は感じます。
やはり、実在の人物の人生を映画にしたものなので、きれいな起承転結で終わるわけではないのですが、
このように生きた人が本当にいたのだなあ、と感動することができました。
刀を振るうことは全くなかったけれど、彼は(彼らは)紛れもない本物の侍であると感じました。
森田作品だねぇ^^
刀ではなく、算盤で幕末を生き抜いた猪山家の家族の物語。
一見すれば抑揚のないように感じますが、そこは森田監督。
とうとうとしたストーリーの中に少しの振り幅を以って
コミカルなシーンも盛り込み、現在世代への忠告(警告)も盛り込み、
2時間20分という時間を飽きさせずに観させてくれています。
(かみさんはちょっと飽きてたらしい(笑)もっとコメディタッチと予想してたみたい…)
こういう時代劇は好きです^^
武士もサラリーマン
元は、茨城大学人文学部准教授磯田道史のノンフィクション「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」。ノンフィクションの映画化にしては、意外に、物語に富んています。
物語は、堺雅人が演じる猪山直之の長男猪山成之の視点で語られていきます。まず最初に思ったのが、江戸時代末期の武士は、サラリーマンだったんだなぁと言う事実。戊辰戦争になれば、話は少し変わりますが、天下泰平の世の中では、我々現代日本人と同様、仕事場に通勤して、仕事をして、そして給料を貰う、そんな生活なんですね。当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、あらためて映像で見ると、認識が一新されました。
さて、堺雅人と仲間由紀恵の二人ですが、まだ老け役は難しいですかね。若い役であれば、特に問題はないですが、まだまだ本人自身が若いので、老け役は若干不自然に感じました。とは言え、演技自体は、特に問題はないと思います。堺雅人良いですね。
老け役が・・・という意味では、中村雅俊も、ちょっと微妙。もっとも、鹿野れ実年齢は、結構いい年齢なのですけどね:-p
所作とか、衣装とか、算用者の仕事ぶりとか、意外に時代考証をしっかりしている印象を受けました。お陰で、江戸末期の下級武士の、日常生活がよく判りました。時折ほのぼのとするシーンもあり、意外に面白かったです。
大河ドラマなら良かったのに
全体の内容は良かった
でも 一つ一つのエピソードをもっと描き込んで欲しかった
まあ 人の一生を一本の映画の中で表すのは難しいのかも
大河ドラマにしたらもっと面白くなるんじゃないかな
江戸時代の家計立て直し・・?
江戸時代末期、武士はこうしていたのかと言う、ある家族の家計の立て直しのお話。
年収にしたら、父と子合わせて、1200万円だったらしい。これは会場でもらった新聞に出ていた。お金持ちと思うが、あると思って、好きに使っていたのか、とんでもないことに。これに気がついた、息子夫婦が、思い切った家計の立て直しを。これが、ここまでやるかと言うくらい徹底しているので、笑える。
現代にも通じる藩の問題や明治時代に移り変わる激動の時代・・そう言うことも絡めて、描いている。家族のあり方も考えさせられる。とてもいい作品だと思う。堺さんと仲間さんの優しい笑顔に癒された。
メインとなるテーマが絞り切れていないところがちょっと惜しいところです。借金のある方には参考になる家庭ドラマでした。
下級武士の古文書から、このような人情味のあるドラマを紡いでいったことは特筆に値します。家族の群像劇を描かせたら、やはり森田芳光監督は上手いと思います。ただ昨年の『わたし出すわ』がかなり酷い駄作だったので、あまり期待はしていませんでした。
本作は、猪山家三代にわたる家族に起こった出来事を、ユーモラスに描き、当時の下級武士の生活事情を再現していく点で、好感が持てました。
但し息子の成之が明治になってから懐古する視点で綴られる本作は、エピソードの羅列が目立ち、メインとなるテーマが絞り切れていないところがちょっと惜しいところです。 たぶん言いたかったことは、蛙の子は蛙なんだということだったのでしょう。父直之の算盤バカによって、スパルタ教育で算盤を叩き込まれた成之は、父親のバカぶりに反発します。しかし気がつけば、自分も新政府軍で会計担当となり、父がやっていた仕事と同じ仕事をしていたのです。そればかりか、父の葬儀の時も、祖父の葬儀に父親がしていたように、葬儀の帳簿付けに勤しんでいたのです。
前半の殆どが、父直之の出世物語に当てられます。算盤の業を発揮して、上司の不正を暴く過程は、これで一本のドラマになりそうな内容です。そのためお駒との婚儀の過程はかなり省かれてしまいました。
一時は、算盤しか能がない猪山家代々の生き様に疑問を感じた成之でしたが、自分も同じように染まってていったのは、家庭環境だけでなく、父親を尊敬する気持ちがあったからなのでしょう。
大幅にカットされてしまいました。
婚儀の夜が一つのハイライト。初夜の床でも、婚儀の精算をしている直之に驚くお駒の表情が可笑しかったです。
その後藩主に取り立てられて、父親と合わせると年収1300万円も得ていた猪山家でしたが、当時の武士は、出世するほど親族などとの祝儀・交際費が高くつく仕組みになっていたのです。直之が当代となりわが家の家計を見直したらなんと、収入の倍以上の借金が発覚したのです。当時の利子は、年収の1/3もの高利で、利子返済のため借金を重ねる多重債務となっていました。おまけに家来はリストラできません。
そこで当時の武士はどこの家も対面を保つために、借金があり、猪山家も例外なく手元不如意となっていたのです。親戚が訪ねてくる度に、料理を振る舞い、土産を持たせて家来や下女には祝儀を渡すなんてことを続けていたものだから、年収の殆どをどこの武家でも当たり前の様に祝儀・交際費に使っていたのでした。
そこで考えた直之の奇策は、息子の袴着の祝いに「絵鯛」を振る舞うこと。宴の参加者が「絵鯛」を並べて観客に見せつけるシーンは可笑しかったです。
そして家計簿を細かくつけることを家訓としたのです。たとえ葬式でも婚儀でも、その日に記録することが、猪山家のしきたりとなりました。のちにこの家訓が元で、さっき触れたような深刻な親子断絶を招くのでした。
さらに、直之は家財道具も徹底して売り払い、年収並みの資金を調達したのです。まさに「聖域なき改革」で、母親の思い出の着物、父親の大事にしていた茶道具など一切問答無用。それでも一家でほのぼのしている猪山家は素晴らしいと思いました。ここで妻のお駒が名言を吐くのです。「貧乏も工夫だと思えば楽しめる」と。
節約対策で一番傑作だったのは、碁盤をたたき売って、碁石の原料であるハマグリをそのまま碁石にして碁を打つところでした。
本作が見ている観客に呼びかけているところとして、不景気の生き方であると思います。日々の生活には必ず無駄があり、その無駄をそぎ落とせば、借金生活を克服できるのだと猪山家の体験は教えてくれます。これはちょうど同時代に生きた二宮金次郎の考え方に似ています。金次郎は「分度」という考え方を推奨して、収入の範囲で生活することを提唱しました。当たり前のようですが、当時の武家の対面では、なかなかわかっていてもできないことだったのです。そして金次郎も、収入の8割で生活して、ゆとりを貯めていくことを推奨しています。
猪山家の生活は、ともするとクレジットカード付けになっている現代人も他人事では済まされないことであり、示唆に満ちてました。
演技面では、実直さを絵に描いたような直之を堺雅人が好演しています。彼が演じるとケチケチ物語が、さわやかな家族ドラマに変わってしまうところが見事ですね。やや印象が薄いのが、お駒を演じた仲間由紀恵。その控えめさが、かえって賢妻ぶりを印象づけていました。一番目だったのは母親お常を演じた松阪慶子。本作の狂言回し的な役どころで、お駒とのあり得ない嫁姑ののほほんとしたやりとりは、爆笑を誘われてしまいました。あの天然ボケのような間の取り方は絶妙ですね。
最近借金がかさんできたような人には、ぜひおすすめしたい作品です。
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