「映画としてのエンターテイメント性に欠け…」武士の家計簿 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
映画としてのエンターテイメント性に欠け…
TVでよく見る「英雄たちの選択」に因み、
磯田道史原作物として観た。
そして、初鑑賞と思いながらも
導入部早々からそうではなかったことに
気が付いた。
「家族ゲーム」等で
エンターテイメントとしても優れた作品を
届けてくれた森田芳光作品にも係わらず、
随分と印象の薄い初鑑賞だったのだろう。
昨今、特に太平洋戦争を引き合いに語られる
武力と同様に重要な兵站の必要性や、
多様な価値観での様々な生き方や
人それぞれに存在する役割の評価の面からの
今風の一つの提示であることは理解するが、
話の展開そのものは平板で起伏に乏しい。
原作がドキュメンタリータッチの
ノンフィクションとのことだが、
しかし、原作がどうであれ、
映画ではエンターテイメントとしての
アレンジが必要と思う。
私としては、
家計の困窮の改善に苦しみながらも、
藩の財政を劇的に救う面を強調した位の
ダイナミックな展開を
期待したかったのだが。
ノンフィクションの原作本を
単にドラマとして置き換えるだけだったら
映画作品としての価値は生まれない。
例えば、藤沢周平の描く困窮する下級武士家
の描写そのものと共に、
一級のエンターテイメントに仕上げた
山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」と
ついつい比較してしまう。
脚本なのか監督の演出に問題があったのか
は分からないが、
算盤侍の日常やエピソードを淡々と描く
だけの作風に、映画としての面白味に
若干欠けてしまった印象の作品に思えた。
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