モリエール 恋こそ喜劇のレビュー・感想・評価
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魅力あふれる喜劇
かなりよい。恋愛、理想と怠惰、自己中と人への愛、強さと弱さ、哲学や感情、いろんな要素があり面白いが、それでいて、バランスがよく軸もしっかりしている。
結果的には、ゆるくラク〜に楽しく観られ、それでいて見終わる頃には気持ちをアップさせてくれるというすぐれもの。わたしは人にもオススメしやすい作品だと感じる。
とはいえ中味は貴族の不倫もの。それでもこの映画のスタンスはなかなかレベルが高い。だらしない人間たちを上から目線で散々笑ってコケにするが、その嘲笑には眼差しの暖かさを感じる。しかも、少し高い心の次元に誘導さえしてくれる。
主人公の劇作家だが、こんなに上手く話を書けるのなら、やはりこの人は喜劇にして正解だったね、と思わされる。なぜならその中味は喜劇とはいえ、中途半端な悲劇より崇高だ、と思えるから。
3人のメインキャラをはじめとする俳優さんたちは見ているうちにどんどん好きになった。
時代の様子が色々わかるのも楽しい。
喜劇のモリエール
巡業から数年ぶりにパリに戻ってきた若き日のモリエール一座。座長のモリエールは「今度は絶対、悲劇をやる!」と意気込んでいるのですが、王様の並みならぬ喜劇への期待感に、あっけなくくじけてしまうのです。冒頭はこんなエピソードからはじまり、彼のユニークな人物像を中心に、恋の話も絡めてたくさんのウィットに富んだ笑いのエッセンスが詰まった作品です。登場人物がみな個性豊かで面白い。それでいて後半、ほろっとさせられる展開も。彼が生涯、喜劇に捧げたのはこんな裏話があったのかなとか。
モリエールは演劇ではすごく有名な人なんだそうだ
総合70点 ( ストーリー:70点|キャスト:85点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )
喜劇を大の得意にしていても本当は悲劇をやりたいモリエールが上演する悲劇には、このような体験があったからだ。そのような想像をかきたてる、可笑しくもちょっと悲しくていい話になっている。最後で気が付いたが、映画は喜劇で始まり喜劇が続くのに、最後には彼のやりたかった悲劇の混じった喜劇で終わる。そのような構成までもが伏線として考えられていた。
でも自分としてはそのような物語の流れよりも、欲に憑りつかれたいい加減な人間たちが織り成す滑稽で機転の利いた科白と演技が楽しかった。それに登場人物たちが個性的で良い。主人公のモリエールの軽快な演技は存在感があったし、成金趣味丸出しのジョルダン、狡賢さを自分の欲のためだけに使うことに何一つ躊躇いを見せない人間の屑そのもののドラント伯爵、美人で機智に富みながらも鼻持ちならない貴族の特権意識の塊のセリメーヌ、そしてモリエールと恋に落ちる美しい悲劇の人妻エルメールと、みんなが動き回って飽きさせない。無理に綺麗に話をまとめなくても、13年前の話だけで十分だった。でも自分はモリエールを全く知らなかったのだが、演劇界ではこの人はけっこうな有名人らしくて、彼の人生や喜劇のことを良く知る人はまた違う印象を持つのかもしれない。
モリエールの喜劇脚本家としての苦悩
モリエールは石膏像としてしか知らなかったが、、、。
主演がなによりもいい。味のある俳優。胡散臭い髭と髪型、相対して品のある笑みがぴったりな俳優。又、他の俳優もかぶりがなくいい配置。女優がなにより綺麗。
加えて、主軸としての題材は緩い割りには緊張感のあるシナリオであった。
構成も意外性あり上手。
特にフィナーレがお気に入りだ。
モリエール自身の経験を元に書かれた喜劇を見る、彼の心情は辛いだろう。だからこそモリエールのシナリオは深みがあったのかもと思えた。劇中で“不幸な出来事には喜劇の側面があるのよ”という台詞をモリエールは言われる。悲劇的な出来事こそ天才喜劇家モリエールの強みなのかもしれない、と感じた
ブラボー!な悲喜劇。
名画座にて。
俳優の江守徹がこの「モリエール」から芸名をとったとは
知らなかった^^;いやはや、そんなに有名な人だったのね。
コメディ・フランセーズの創始者ともいわれている。
予備知識がないうえに、公開されたのも知らなかったが
いやはや、ブラボー♪ブラボー♪すごく面白い作品だった。
かの「恋におちたシェイクスピア」のフランス版?ともいえる
出来の良さ。彼の空白の歳月にスポットを当て、もしも
こんな体験が彼の作品に影響を与えたのだとしたら…
という、フィクションながら説得力抜群の作品。素晴らしい。
モリエール役のR・デュリス。
どうもこの人の口や顎の骨格がニガテなのだが^^;巧い!
笑いから泣きまで存分にモリエールを堪能させてくれる。
そしてなんといってもこのヒト、F・ルキーニ。
何やらせても巧い!とはこのヒトの代名詞なんじゃないかと
思うほど今回もハマり役。真面目な顔で笑わせる笑わせる。
なんたる芸人なんだと(あ、俳優さんでした)毎回唸らせる。
この二人に加えて紅二点、
マダム役のL・モランテの美しさと貫録を醸したユニークさ、
セリメーヌ役のL・サニエの傲慢で生意気な美しさ愛らしさ、
さらにイケメン貧乏伯爵の立居振る舞いにも笑える笑える。
主要キャストにおける完璧なコメディを堪能できる。
かと思えばタイトルにもある「恋」という点で、胸を剥くような
悲劇(一部喜劇)も用意されており、笑いだけで終わらせない
脚本と演出の妙技を堪能できる。ラストは感動して泣けた。
喜劇を悲劇へと転調させたシェイクスピアにもあるように、
それは背中合わせの紙一重ということか。本人にとって
忘れ得ぬ哀しみこそが喜劇を生み出す原動力となるように
経験は必ずや自身になにかを見出す能力を与えてくれる。
出逢わなければよかった恋など、なかったのかもしれない。
(司祭タルチュフ、モリエール作品の登場人物だったのね^^;)
フランスにはモリエールがいる
「イギリスにシェイクスピアがいるように,フランスにはモリエールがいる。」誰の言葉か知らないがこう言わしめるモリエールとは,演劇人(特に新劇人)で知らない人はいない17世紀の偉大な劇作家だ。彼の作品がシェイクスピアに比べて日本であまり上演されないのは何故なのだろう?
モリエールといえば喜劇,それもドタバタに近い笑劇(ファルス)を得意とし評価されている。一般的に喜劇は悲劇に比べて扱いが低い。とりわけインテリ層では笑い=低俗とみなされている。しかし演劇における喜劇は,はるかギリシャ古典劇にもさかのぼり,かのシェイクスピアとて名作喜劇を多数残している。それでも喜劇の扱いが低いのは今も昔も同じことで,モリエール本人も悲劇で名を成したいと思っていたほどだ。本作はモリエールの伝記と彼が残した戯曲から発想を得たフィクションだが,観ているうちに本当にこんなことがあったのではないかと思えてくる。それほどモリエールその人も登場する人々も魅力的なのだ。コスチューム・プレイでこれほど笑える作品があったろうか?モリエール作品の登場人物が活き活きしているのは,実在の人物をモデルにしたからではないか,と思ってしまうほどプロットが完成されている。事実は小説より奇なりと言うではないか。華麗な衣装を身につけた貴族や成金たちの傲慢さ・狡猾さ・滑稽さ・愛らしさを,見事な洞察力でカリカチュアしていくモリエール&ティラール監督。「人の心を掴む喜劇」を生み出すには,「人物」を描ききれなくてはならない。日本でモリエール作品があまり上演されないのは,「人物」を演じきれる本物の喜劇役者が少ないせいかもしれない。喜劇はコントとは違う,常に悲劇と裏腹だ。そこにモリエール喜劇のエスプリがある。そのエスプリをスピーディかつハイセンスに描いた本作は正真正銘のフランス映画といえるかもしれない。
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