「偽善と偽悪」悪人 リンタさんの映画レビュー(感想・評価)
偽善と偽悪
クリックして本文を読む
被害者になることで自己正当化する偽善と、被害者にしてあげる愛情が被る偽悪。どんな人でも内包しているこの因果をとても良く描いています。他人が欲しがる見栄えが良い彼氏がいるという友人の嘘を同僚で「友達だからという大義」で受け入れつつ蔑むことで自分の足元を固める人、臆病な自分を上書きするために死んだ女を肴にはしゃぐ友に「同級生で金持ちだからという大義」で相乗りすることが友情であり痛みを分かち合う手段だと思って諫めない人。それに対して、老婆にむしゃぶりつくマスコミを引き剥がすため車内の雰囲気を悪くしながら怒鳴り散らし、同乗している乗客をも無視し職務を逸脱して老婆の降り際に自分の思いを伝えるバスの運転手、自分の全てを受け入れ、生きる証とまで思わせてくれた自分の命よりも愛する人を安全な「被害者」の位置まで連れて行くために、今までの短くも焦がれるような愛しい日々を全て自分からも、相手からも消し去るがごとく「俺は、あんたが思うとるような男じゃなか!」と口づけながら光代の首に渾身の力をかける祐一。どうしようもなく思える増尾も客商売のくせにまずいラーメンを出して金を取っている店に馬鹿面さげて食っている他の客を尻目に「ごちそうさん、まずかったぁ。」と言えるほどの偽悪心はあるのです。偽善と偽悪、カレー味のウ○コとウ○コ味のカレー。普段食べているのはどちらなのかを見た人の感想から伺えるのがまた楽し。私の好物はカレーです。
コメントする