「それでも人は「お前は悪くない」と言うんだ」悪人 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
それでも人は「お前は悪くない」と言うんだ
字数制限がキツいので急ぎ足でレビューする。
役者陣の演技が光る力作であった。柄本明と樹木希林の演技は流石に群を抜いているが、主演の2人も素晴らしい。
主人公・祐一を演じた妻夫木聡は、自己表現が下手な人間らしい飛び飛びの語り口、喜びと後悔が入り雑じるラストの表情が見事。
深津絵里演じる光代の憂いを帯びた笑顔にも、彼女の度を越えた“わがまま”を納得させてしまう空しさがある。
光代が同じ孤独の匂いのする祐一に惹かれたのは確かだが、彼が空しい日常を破壊してくれる『手段』だったという身勝手な側面も忘れてはならない。
彼女が彼に抱いていたのは愛情の二文字で括れるほど綺麗な感情ではない。最後の「私が悪いの」という叫びも、祐一を利用した卑劣な自分を責めていたが故か。
対する祐一は、光代が『人殺しを助けた女』ではなく、飽くまで憐れな被害者として社会に戻れるよう——自分を救ってくれた大切な人が平穏な生活に戻れるよう、徹底して“悪人”となる事を選んだのだろう。
『お前は悪くない/俺が全部悪い』
それが彼の行動の真意であり、「私が悪いの」という言葉に対する返答だったのだと思う。
様々な人物が「お前は悪くない」という言葉を口にした。
図らずも殺人を犯した男へ。
身勝手な理由で彼を逃がした女へ。
人殺しを育てたと糾弾される老婆へ。
利己的な性格がたたって殺された娘へ。
しかし「お前は悪くない」と言った誰しも、彼らが少しも悪くなかった、全く落ち度が無かったとは考えていない筈だ。
だけど、それでも「お前は悪くない」と人は言うんだよ。大切な人や辛い思いをしている人が背負った罪を、苦悩を、少しでも軽くしてあげたい、できることならまるごと背負ってやりたいと願うものなんだ。
岡田将生演じる大学生の男は正にその対極だ。
罪悪感こそ抱いていても、それとまともに向き合う勇気もなく、笑いのタネにする事で安心感を得ようとする人間。
自分の罪を贖う手段も知らない彼は、いつしか自分の罪を忘れてしまうのか。それともそのひきつった笑いで恐怖を押し隠し、惨めに生き続けるのか。
彼の最後の姿に最早怒りは湧かない。ただひたすら、憐れなだけだ。
こんな悲しい人間が世に溢れているとは考えたくないが、近頃、巷で話題の裁判のニュースでこれと良く似た男を見掛ける。興味本位の報道によってそう見えているだけだろうか。
何にせよ、悲しい世の中だ。
<2010/9/3鑑賞>
77さん、ありがとうございます!
おお、意外な所から返事が。
このコメントに気付いてくださってると良いのですが……。
いや、読みごたえがあると言ってもらえると嬉しいです。
……まあ基本的には書きたい事をダラダラ書き連ねた
長い・カタい・読みづらいレビューだと思うので(笑)、
テキトーに読み飛ばしていただければと。
まだ77さんのレビューに全部は目を通せていないですが、
僕が観てない映画もわらわらあるようなので
(特にアニメ関連はからっきしなんですよ……)
レンタル店で探してみようかなと思います。
次回レビューも楽しみにしてます!
ヨロシクです。
ダイ・ハード3にコメントありがとうございます。
こちらにお返事失礼します。
きびなごさんのページさらっと拝見させて頂きました。
かなりの映画通さんですね。
レビューも読みごたえあるのばっかり!
またちょくちょく覗きにきますね。