「殺される女と殺す男そしてすがる女。」悪人 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
殺される女と殺す男そしてすがる女。
2010年。李相日監督。その年のキネマ旬報のベストワン作品。
激情に駆られて女を殺す男・・が主人公・祐一(妻夫木聡)
この映画では殺される女・佳乃(満島ひかり)を情け容赦なく
断罪している。
ひとつ→出会い系サイトで出会った祐一と関係を持ち、金銭を要求していた。
ふたつ→デートの約束をした祐一が車で1時間半も掛けて待ち合わせ場所に来たのに、
見た目の良い金持ちの大学生の増尾(岡田将生)の車に目の前で強引に乗り込む、
・・・そう言う、当て付けを堂々とやる。
そして大学生の増尾。
この男もゲスの極み・・として描かれる。
テーマは「人間の善と悪」
殺した男には、殺す理由があり、
殺された女には、殺される理由がある。
そして増尾。
ドライブの途中、人気のない峠で、気に食わないとの理由で佳乃を、
助手席から蹴り落としている。
峠で車から降ろす→付けていた祐一もどうかと思うけれど、
佳乃の「レイプしたと訴えてやる!!」との言い草も、人間として度を超えている。
そしてもうひとりの主役。
紳士服店に勤務する光代(深津絵里)
佳乃と同じく出会い系サイトを通じて祐一と知り合い、殺人犯と知りながら、
逃避行に・・・。
自首する決意をして警察署に向かう祐一を、クラクションを激しく鳴らして、
引き止め「一緒に逃げよう」と誘う。
光代は善人代表なのに結果として祐一の刑期を長くする行動を取らせてしまう。
皮肉なことに、殺人犯の祐一より、大学生の増尾の方が極悪人に見えてしまうのだ。
爽やか系の岡田将生が軽薄で我儘で冷酷な男を演じて上手い。
佳乃の父親は増尾を恨み、スパナを握って増尾に迫るが、遂にスパナを振りおろす事を、
自制する。
怒りと恨みを、自制する佳乃の父親。
挑発されて自制心を失った殺人者・祐一。
柄本明の被害者の父親と、加害者・祐一の祖母役の樹木希林。
役になり切って実に上手い。
逃げ場がないほど祐一を追い詰める佳乃。
佳乃役の満島ひかりもズルい女が印象的。
モントリオール映画祭で主演女優賞を受賞した深津絵里。
37歳の光代は婚期も遅れた年齢で、初めて性に溺れたのかも知れない。
そうでなくては、逃避行の理由が見当たらない・・・
(5キロ圏内の人生に飽き飽きしていたのかも、知れないね)
筋運びと構成が実に巧みだ。
久石譲の音楽がかなり主張して鳴り響く。
我が愛する妻夫木聡は、嫌いになれない殺人者を淡々と、そして演技し過ぎず、
バランス感覚が素晴らしい。
殺人を想像することと、実行することには、
大きな乖離がある。
飛び越えてはいけない・・・
そんな気がする。
…ジョゼと虎と魚たち
に共感とコメントありがとうございます。
…悪人
妻夫木くんが
まさかの殺人を犯してしまう役に…
この作品で役者の幅を広げましたね。
琥珀糖さんのレビューで
細かなところまで思い出しました。
一度しか観ていない作品ですが
何とも切なさが残る映画でした。
岡田将生くんはこの時のイメージが
強くて今でも好きになれません。(笑)
わたしも妻夫木くんは好きな俳優さんです。いつまでも応援したいです。