「悪人はやはり悪人なのか」悪人 jeromisunさんの映画レビュー(感想・評価)
悪人はやはり悪人なのか
クリックして本文を読む
令和に入った今頃になっての鑑賞。
演技の面では、錚々たる出演陣ゆえに素晴らしく、
作品に引き込まれた2時間だった。
人殺しの祐一(妻夫木聡)の描かれ方は、
祐一を愛する女性(深津絵里)との関係性で描かれているため、全然悪い人という感覚を得なかった。
また、殺された女性の父親は、殺人に間接的に関わることになった男に怒り狂い、真犯人である祐一への怒りは描かれなかったため、なおさら。
だが、警察、マスコミや世間の目から逃れていくうちにどんどん孤立し、不安やイライラが募り、ハラハラする犯罪者としての心理描写もしっかりと描く。
そして、その焦燥感は一定のラインを超えると諦めに変わった。
ただその間も、ずっと祐一を愛した女性が付き添い、互いに協力して飢えや寒さをしのぎ生きる姿からは、焦燥感を一時でも忘れさせる愛情があった。
最後はやはり祐一が捕まるのだが、連れ添ってくれた女性を殺すふりをして、罪を自分だけのものにしようとする。
1つの殺人事件を巡って、多くの人が巻き込まれ、偽りの情報や演技が流され、犯人像をよりクッキリと世間に映し出す。
犯罪心理やその事件に奇しくも関わった人間の取る行動が描き出され、ある意味で話のメインはその周囲への影響だったのかなと思った。
悪人は、やはり悪人であった。しかし、悪人をより悪人たらしめるのは、直接関わらない第三者なのかもしれない。
その世間の目が、犯人やその周囲の人たちを狂わせる、ある意味での凶器となるのだろう。
コメントする