「来たるロボット社会に問いかける」イヴの時間 劇場版 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
来たるロボット社会に問いかける
先日見た「サカサマのパテマ」の吉浦康裕監督の名を知らしめた作品。
元はインターネット配信の6話のアニメシリーズで、それを編集した劇場版。
知人が本作を大絶賛しており、気になってなってはいたけどなかなか見る機会がなかったが、「サカサマのパテマ」と一緒にレンタルし、ようやく鑑賞。
アンドロイドが実用化された近未来。高校生のリクオは、家に仕える女性型アンドロイド“サミィ”に不可解な行動データがある事に気付き、調べると、“イヴの時間”という喫茶店に辿り着く。そこには、人間とロボットを区別しないルールがあった…。
率直な感想は…
良かった!見て良かった!
“アンドロイドが実用化された近未来”“人間とロボットが共存する世界”と言うと、「攻殻機動隊」などが思い浮かび、ちょっと小難しそうかな?とも思う。
が、あくまで個人個人に焦点を当てた作りなので、取っ付き易い。
コメディ要素も多く(結構笑える)、ハートフルな作風で後味も良い。
画の素晴らしさは言うまでもなく、独特のカメラワークも印象的。
吉浦監督の才能をまじまじと感じる。
“ロボット三原則”をベースにしつつ、アンドロイドの普及に反対する委員会、作中では“ドリ系”と呼ばれるアンドロイドに依存する人間など、リアリティある社会描写も見事。
映画の核心はズバリ、人間とロボットの関係。
22世紀のネコ型ロボットならまだしも、ロボットに感情なんてある訳ない。でも密かに悲喜こもごもを抱いていたら…? その思いを、“イヴの時間”で吐露する。
サミィは何より主人のリクオを思う。その思いを知って、リクオもロボットに対する考えが変わる。(サミィは外見が美人なので健気な思いに萌えてしまう(笑))
ある事がきっかけでロボットに対して冷めた見方のリクオの同級生マサキと、その原因であるハウスロイド“テックス”のエピソードは一番の泣かせ所。
突然の珍客の完全なロボット“カトラン”や、その他“イヴの時間”に集うロボットたち…ウェイトレスのナギが、明るく温かく見守る。(彼女にも、ロボットとのある過去が…)
このままロボットが普及し続けたら、必ずぶち当たる課題。
ロボットはただの人間の為の道具?
友達? パートナー?
映画の中で描かれている事は、そう遠い未来の事でもないかもしれない。