劇場公開日 2010年12月18日

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最後の忠臣蔵 : インタビュー

2010年12月13日更新
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スタッフには脚本の田中陽造、撮影の長沼六男、美術の西岡善信といった、本格時代劇と呼ぶにふさわしい布陣がそろった。特に、役所を背中からとらえたショットが印象的で、随所で孫左衛門の心の機微を見事に表現している。

「杉田さんと長沼さんの美意識。ダンディズムというか、男の背中が好きなんでしょうね。長沼さんは1カメ(1台のカメラ)で撮るスタイル。杉田さんならテレビのように2台で同時に芝居を収めていくでしょうけれど、それだと照明やカメラのポジションで犠牲にしなくてはいけないところが出てくる。だから、1カメでいきたかったんだと思う。そのスタイルで撮ると、何回も芝居をしなければいけない苦労があり、一生忘れられないくらいセリフをしゃべっていますが、成果はあったと思います」

役所自身、昨年の「ガマの油」で監督に挑戦。初めてスタッフ側から現場を見たことで、芝居への意識に変化があったという。

「手を抜いてはいけないと(笑)。スタッフは、自分たちが準備した場所で俳優がどんな芝居をしてくれるんだろう、どういうふうに物語を語ってくれるんだろうと期待しちゃうんですね。自分が呼ばれ、何か期待されているんだと思ったら、下手でもいいから一生懸命やろうと思いますよ。スタッフは、俳優にとって味方だという思いで仕事をすることが大事だと感じるようになりました」

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孫左衛門は可音を良家に嫁がせることを願い、その思いは天下の豪商と呼ばれた呉服司の跡取り息子に見初められたことで成就する。輿(こし)入れの日、孫左衛門に思いを募らせていた可音との別れの抱擁は、なんとも美しく悲しい。そして、ある重大な決意を実行に移すが、その生き方については「あこがれですね」と語る。

「それだけ、大石内蔵助が魅力的な人だったんでしょう。普通、社長の愛人の子を育て上げよと言われても、何?って思うじゃないですか。でも、この人物だから、愛人への思いを知っているからこそ、自分は討ち入らないでそのために生きますと言う。なかなかできないけれど、主との関係が素晴らしいし、男らしさを感じます」

今年9月に「十三人の刺客」が公開され、大型時代劇が続くことになったのは「偶然」だそうだが、それ以前となると「どら平太」(2000年)までさかのぼる。かつてドラマ「三匹が斬る!」シリーズなどで勇名をはせただけに、時代劇への思い入れは強い。その魅力は普遍性だ。

「時代劇は年数がたっても見られますから。現代劇は、その時代を映し出すという点で面白いけれど、昔の携帯電話で芝居をすると今は笑いどころになってしまう。本当にいい時代劇ができると、ずっと新鮮なまま。やはり日本人として、侍の生き方は魅力的だし、町民であれ農民であれ質素ではあるけれど、地域社会で助け合いながら、つましいながらも生きていく人情がある。現代人として、要所要所で昔の日本人はこうだったというのを知っておくのは面白いと思いますね」

「最後の忠臣蔵」は時代劇として初めて、米国での同時公開が決まった。10月にロサンゼルスで行われたプレミアに参加し、「劇場にうねりがあって、(映画の意図は)伝わっていると思います」と手応えをつかんでいる様子の役所。日本人の1人として、古き良き時代の日本を後世に伝え、さらに世界へと発信する使命を帯びているのかもしれない。

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