劇場公開日 2010年3月20日

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ウディ・アレンの夢と犯罪 : 映画評論・批評

2010年3月16日更新

2010年3月20日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

“ウッディ印”から果敢に外れたアレンのキャリアの折り返し点

久々にニューヨークで撮ったウッディ・アレンの最新作「Whatever Works」。“ウッディなき(本人が出ていない)ウッディ印映画”と評された一作で回復された“世界”を思いつつ07年の「夢と犯罪」を今、見る醍醐味を噛みしめたい。何しろ映画は“遙かウッディを離れて”の極みを究めた話術を光らせるのだから。

ささやかな野心のためにどつぼにはまるロンドンの労働階級兄弟。映画がみつめる運と偶然に弄ばれる人も、そこに絡みつくペシミズムも確かにアレン印のひとつだろう。あるいはアメリカの伯父さんがもたらす夢の代償として殺人を請け負う兄弟が裏目裏目の成り行きに足をとられていく様はいかにもノワールで、だから珍しくオリジナル曲を使い緊迫感を盛り上げるあたりにアレンのジャンル的定型への意識を見出すこともできる。が、こと視覚に関して彼が採るのは英国での3本目にふさわしい地に足ついたリアリズム。悪夢に苛まれる弟の見た夢を再現する代わりに映画は真夜中の鏡に覚醒した彼の顔を切りとって現実にこそある悪夢をすくう。雨も影も幻想の色をすりぬけている。アップを閉め出し兄弟を並べたツー・ショットを基調に物語りを紡ぐ質実剛健な口調も見逃せない。一方で郊外へのドライブ場面、ふっと光が大気に満ちて、続く「それでも恋するバルセロナ」でのヌーヴェルバーグ愛解禁が予告される。その「バルセロナ」が結局、変われない人の故郷への旅立ちを描いた後に“世界”に復帰の最新作——ならば“印”から果敢に外れたアレン映画「夢と犯罪」、彼のキャリアのひとつの折り返し点としてやはりかなり興味深い。

川口敦子

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