「キャラは立っていましたが、最後は何とも歯切れの悪い終わり方だったのです。」バッド・ルーテナント 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
キャラは立っていましたが、最後は何とも歯切れの悪い終わり方だったのです。
麻薬漬けになり、目も虚ろなテレンス刑事を演じるニコラス・ケイジが凄くはまっていました。やっぱりダークヒーローを演じた方が、性に合っているのではないでしょうか。 役どころは、単なる悪徳刑事ではなく、どここか警官としての誇りや人間味を捨てきれない二面性をもつ憎みきれない奴なんですね。その微妙なニュアンスをニコラスはきっちり役作りしておりました。
但し、ラストになって急にストーリー展開が急になって、中途半端にエピソードを処理していったのが気になります。
テレンス刑事がどういうきっかけで、まっとうな家庭を持ってみようと思ったのか。そして移民の一家を惨殺した犯人を殺さず生かしておいたのか、最後は何とも歯切れの悪い終わり方だったのです。
それにしても白昼よくまぁ、仕事中でもテレンス刑事は麻薬をかかさず吸い込むものです。よく同僚にバレずに済んだことが驚きです。といっても署内にグルになっている警察官がいて、容易に証拠品の麻薬を横領することができたのでした。
そして、麻薬を手に入れるためには、売人を脅して麻薬を巻き上げるなんて朝飯前。カップルでラリっているところを発見すると、見逃してやるからと彼氏の前で彼女を犯してしまうなんてことまで、やってのけます。
だけれどこんなダーティーな刑事でありながら、表の顔は水没した警察署の中に置き去りにされた容疑者を救ったヒーローで、署長からの信任も厚かったのです。
その裏でテレンス刑事は、ワルたちも手玉にとって出世の肥やしにしてしまう悪辣さでした。連んでいた麻薬の売人一味を罠にはめて逮捕に導き、自分の手柄にしてしまうのです。逮捕するまで麻薬の売人一味を彼は徹底して利用しました。賭博の借金の穴埋めとして、捜査情報をリークして高額の報酬を得たり、押収した麻薬を金に換えたり、はたまた自分を脅迫した人物を殺害させたり、この一味を自分の都合のいいように振り回すわけですね。その辺のワル知恵の回し方は、感心するほかありません。
問題は、本人の心の問題。オリジナルでは宗教にも触れられていたのが、本作ではカットされてしまい、テレンス刑事の心の葛藤や良心の呵責するところが分かりづらくなったことが残念です。唯一、父と自分と二代にわたって警官として写っている写真を眺めているテレンス刑事のシーンを描写することで、警官としてのプライドを取り戻そうとしているのかなと思わせるところぐらいでした。
それにしても父親もその後妻もアルコール中毒患者だったのです。義理の息子が薬漬けになっていることを知っているこの後妻に向かって、テレンス刑事が酒は止めた方がいいと忠告するとき、あんたにだけは言われたくないと言い返します。全くそのとおりだと思いましたね。
親子二代に渡って、警官にであるにもかかわらず酒と薬の中毒になってしまったこの二人に共通するトラウマを描ければ、もっと深みが出たのではないでしょうか。
そしてテレンス刑事の愛人フランキーに抱く、ラストシーンでの優しさは本物であったのかどうか。見てきた人の感想を教えてください。
そしてテレンス刑事は最後に変わったのか?ワルのままなのかについてもご意見ください。
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