劇場公開日 2010年10月2日

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「古き良き映画」シングルマン アラン・スミシーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5古き良き映画

2011年3月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

あのトム・フォードが監督したという事で同じ業界にいる者として
事前に高評価とは聞いていたものの
期待半分・冷やかし半分で劇場へ観に行きました。
実際に観てどうだったのかというと・・

もう号泣でした!

内容は・・
1年前に恋人(男)を事故で亡くした大学教授の男(コリン・ファース)が
悲しみが時間では解決しない事を悟り
自殺するまでの1日を追った物語です。

冒頭はやや荒いオールドシネマを彷彿とさせる様なトーンの映像で
主人公の心の空虚感を表しています。
コリン・ファースの演技と相まって細かい心理描写が
非常に丁寧でしかも説明多過になっていないのは見事です。

大学の美学生にアプローチを掛けられ動揺しつつも
閉ざされていた心が少しずつ開いていく段階を
冒頭から続いていた粗めのダークトーンから
徐々に画面全体が明るくライトトーンになっていく様子は
主人公の心の変化をトーンと演技で感じさせてくれていると同時に
観ている側への心の疑似体験とも重なる様に感じられます。

まるで最近の映画なのに
古き良き映画を観た様な
心地良い感覚です。

亡くなった恋人との思い出の琴線に触れると
フラッシュバックする過去の映像は
亡くなる直前から出会いまでを
徐々に戻っっていくのですが
出会った瞬間のコリンの表情を観たら
もう涙が止まりませんでした。。

衣装やロケ地も時間や予算等の様々な制約がある中で
GUCCIを復活させた見事な手腕が
映画というカテゴリーでも如何なく発揮されており
特にコリン・ファースの衣装(トム・フォード)や
寂れた大学、主人公の自宅など内容と完璧にマッチしています。

原作の小説をトム・フォード自身の実体験(本人もゲイ)を
取り入れて大胆に脚色した内容は
人生がこんなにも愛に満ち溢れ
素晴らしくもあり切ないと思わせてくれます。
本人曰く当分撮らないみたいですが
次の作品も楽しみです。

最近は、これ映画にする意味あるの?
みたいな作品が多くなってきています。
バカが作ったおバカな恋愛映画を観るよりも
何千倍も良い映画です。

余談ですが・・
出張中にこの映画を観て
帰りの飛行機でパンフレットを読んでいたら
CAに「私も観たいと思っていました。どうでした?」と
声を掛けて頂きました。
「オススメです」と私。
「じゃあ、必ず観ますね」とCA。
あぁ・・観て良かった。。

というわけで
もう公開は終わっていますが
「劇場」で観てパンフレットを機内で観るのがオススメですW

アラン・スミシー