「映画というより説明解説。」桜田門外ノ変 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
映画というより説明解説。
某映画サイトの、
「茨城県の地域振興と郷土愛の醸成を目的に、
市民が主体となって企画し、映画化が実現した時代劇」
という触れ込みを見て、なるほど~。と感じた作品。
エンターテインメント性とか、感動歴史巨編とか、
そんな類とは一線を画している不思議な作品に思えた。
何しろ冒頭からナレーション解説は入るわ、字幕は入るわ、
へ?これ映画?と思ったほどTVの歴史特集などに近い。
なので、ある意味非常に勉強になった^^;
桜田門外の変。といえば歴史的大事件で教科書にも載る
事件なのに、大老・伊井直弼の暗殺ぐらいしか記憶にない。
水戸市民は、更にそれ以外のことを伝えたかったのね。
歴史に詳しくないと分かり辛いかと思いきや、
何度も丁寧に入る解説やそれぞれの登場人物の字幕説明
の多さからして、知らない人にも分かり易く。がモットーの
ような気がする。冒頭であっさり(テロ)は行われてしまうが、
問題はその後、彼ら水戸藩士がどのような運命の末路を
辿ったかが克明に描かれる。配役の豪華さもさることながら、
歴史に対してリアルに忠実に描かれている(のであろう)のが
スクリーンからひしひしと伝わってくる。
カッコいい英雄も、必殺○○人も、そんな人間は出てこない。
やたらと長く、見せ場のない暗殺シーンも、つまりはそんな
現状だったのだ。と淡々切々と描いているように感じられた。
時を見誤ったか、せっかくの事変も計画通りに大成ならず、
彼らはお尋ね者として追われ続ける。怪我で命を落とす者、
捕まり斬首となる者、拷問される者…無残で非情な場面も
多く、血飛沫もかなり上がるが、いかに激動の時代に彼らが
日本の為に(誰もがそう信じて)闘ったかが克明に描かれる。
本当に、あらゆる意味で、「無念」とはこういうことかと思った。
哀しみの連鎖は、彼らの家族、彼らを守り抜こうとした下士
らの行く末へと繋がり、さらに深みを増す。そして最後には
指揮官である関鉄之介の最期までを丁寧に追い続けていく。
ひとつの歴史的事件をここまで忠実に語る映画も珍しいが、
前述の通り、市民が一丸となり描いたとなれば納得できる。
ただ、映画としてドラマとして、どうかと考えると、
その歴史にたいして史実を極めるか情緒を優先させるかの
ギリギリのところであのナレーションになってしまったのか。
という、私的には残念な感想もややあったのが本当だ。。。
(しかし勉強になりました。最後の現在の光景は実に印象的)