「人恋ふる時」バグダッド・カフェ 4Kレストア版 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
人恋ふる時
不具合のオンパレードから始まる。
斜めの画面。
色味が自然ではなく、加工された映像。
ぎすぎすした喧嘩。
取り残された(見切りをつけた)女。
コーヒーマシンが壊れたカフェ。
客を追い出そうとするモーテル。
がらくたと埃。
濃いコーヒーと薄いコーヒー。
顔も観たくない男の荷物と完璧にセットされた髪型。
なぜか、正装して掃除をする女性。
他にも、他にも。
なぜ?この組み合わせ?
監督の隠されたメッセージを探してしまう。
この版は、監督が「最初に編集した『ファースト・ディレクターズ・カット』と呼ぶべきもの」で、「全てのカットの色と構図(トリミング)を新たに調整した」ものだそうだ(監督へのインタビュー記事から)。
主題歌が流れる時、胸の奥が痛くなり、涙が流れそうになる。
心の底から絞り出すように叫んでいるようで。
「ほう」と、ため息にも似た息を吐きたくなる。
(人生の)砂漠に一人残されたような、そんな気分に襲われる。
心がかき乱される。
断捨離って大事なのね。
ジャスミンは初めは気難しい夫人だったのに、間違えて夫のトランクを持ってきてしまったこと、それを受け入れざるをえないところから変わっていく。ガチガチのスーツから段々とラフな服装に変わっていくところとジャスミンの心の変化がうまく饗応していく。
ブレンダはかってにジャスミンに掃除され…。
人生の中で遊ぶことを覚えたジャスミン、そんな彼女に巻き込まれていくブレンダ…この辺の描写・演出が小気味よい。
ラストのジャスミンの選択が粋。その顔の少女のように煌めいていたこと。
いつの間にか、心のオアシスになる。
不思議なマジック。
小気味の良い映画です。
なのだけれど、切ない主題歌。人とのつながり・人との絆。その人が必要とする程よい距離。
そんなことを心の奥からえぐり出し、再確認できる映画です。
題名は有名ですが、興味もなく見る気もなかった映画ですが、ふと気になって見てみると・・・。
なんか、とても映画でした。とは言え、最初はなんだかなあ、と思っていたのに、最後には「見てよかったなあ」と思える映画でした。
とみーじょんさんのレビューの気持ちがよくわかります。