「世の中は、黒くて丸くて理不尽だ」GANTZ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
世の中は、黒くて丸くて理不尽だ
原作を知る方のレビューはヒジョーに手厳しいものも多いようだが……
原作未読の僕は「何じゃこの黒くて丸い理不尽野郎は!」と
話にグイグイ引き込まれてしまった。
凄ェ面白いじゃないすか!
日本のマンガ実写化作品は僕も何本か観ているが、
高評価を付けた憶えは一度も無い
(まあ『孤高のメス』とかあるが、エンタメ作品では、て意味で)。
これは勿論すべての実写化作品に当てはまる話じゃ無いが、
マンガでのみ通用する非現実的な台詞やキャラを、
何の変換もせず現実世界に放り込もうとする
一部の作り手の無神経さが、僕にはどうにも堪え難いのだ。
『GANTZ』は違う。
世界観こそ不条理極まりないが、不自然さは無い。
おまけに安易なセンチメンタリズムとも(ほぼ)無縁だ。
女子供でも死ぬ時は情け容赦なく死ぬし、
凄惨なスプラッタ描写や人体損壊描写もある。
TV局制作の映画でここまでやるとは!と正直ビビった。
これらは黒球ガンツの不条理さを際立たせる上で、
そして主人公が生の実感を得る過程を描く上で必要な描写だろう。
そういう意味ではまだドギツイ描写があっても良かったと思うが、
本作を商業映画として成立させる上ではあれ位がギリギリのキワキワか。
アクションシーンは、邦画では相当に迫力のある方だが、
数多のハリウッド大作と比較すると見劣りしてしまうし、
テンポもヌルい(特にクライマックス)。
しかしどんなに派手なアクション・CGを披露しようが、
そこに感情が乗らなければTVで眺める花火大会のように味気無い。
この映画はアクションシーンがしっかり主人公達の心情に絡んでいる。
彼らが一戦ごとに成長していく過程が描かれているのだ。
己の存在価値を疑っていた主人公・玄野が見い出した答えは、
自分を待っていてくれる人、生かしてくれた人の為に生き延び、戦い続けること。
僕がこの映画に肩入れする一番の理由は、
そんな主人公に共感したからだと思う。
僕らはどうだ。
「なんでこんな虚しい思いを抱えながら生きなきゃいけないんだろ」
と自問自答する日々をそれでも生き続けるのは、
自分が消えて悲しんでくれる人、困る人がいると信じてるからじゃないのか。
個人的には、これまで観た日本のマンガ実写化作品の中で一番好き。
散りばめられた謎は殆んど回収されていないし、
4月公開なんて固いこと言わず、
はヤく続編観せてくだちい。
<2011/1/29観賞>