GANTZ : 映画評論・批評
2011年1月25日更新
2011年1月29日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
日本映画の独自性を生かし若者の現在に刺さる本格SF娯楽作
この傑作漫画の実写化は、原作への怖れや読者への媚びに基づく“完コピ”と称する愚かなダイジェスト戦術とは無縁だ。人気スターを得て交通整理に徹するだけになりがちな日本映画の現場で、むしろ役者を追い込むほどの気迫さえ伝わってくる。そして、荒唐無稽な世界のエッセンスを2時間に圧縮することに成功している。
開巻から40分は息を呑んだまま。死んだはずの人間が招かれた不条理な世界で強いられる、生死を懸けた戦いの緊張感が心地良い。時折挿入される人を食ったようなコメディリリーフは、より不気味さを醸し出す。原作の厭世的な高校生を、就活中の虚ろな大学生にした改変は功を奏した。弛緩した日常から切り離され、戸惑いつつもリアルな生を実感し、次第に決然となっていくプロセスは、若者達の現在に深く刺さるだろう。痛みを表す上で、グロテスクを避けず陰惨になりすぎぬ色彩設計や、CGのみならず伝統的アナログ特撮との果敢な融合は、実に効果的だ。本気度を示す爆破の快感、役柄に同化した俳優の表情。すべてが絶妙に絡まり合い、感情移入を促している。
全2部作の前編ながら宙吊り感で引っ張るだけでなく、成長譚として完結させている点も好感度大。日本映画ならではの技術や感性を生かしつつ、同時代の気分をすくい取る人間ドラマとしても成立させたのは、佐藤信介の咀嚼力と映画的センスに他ならない。決して誇大表現に堕しない「日本が世界に挑む本格SFエンターテインメント」である。
(清水節)