劇場公開日 2009年12月12日

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マラドーナ : 映画評論・批評

2009年12月1日更新

2009年12月12日よりシアターN渋谷ほかにてロードショー

「神の手」を是とするファンなら必見

世紀の天才フットボーラー・マラドーナとは何者か。エミール・クストリッツァ監督のマイケル・ムーア的な突撃取材と、ディエゴ・マラドーナの目眩くゴールシーン、プライベート映像やニュース映像、さらにクストリッツァ作品の“マラドーナ”な断片がごちゃまぜに提示され、そこから「マラドーナ」が浮き彫りにされる。マラドーナを理解するのではなく、感じるための映画だ。左脳でなく右脳で見る作品だと思う。

反ブッシュ、反米国、反システムが基調となっているが、マラドーナの言動は論理的には穴だらけだ。コカイン中毒で人間として破綻していく様も描かれる。だがその一方で、プレーヤー・マラドーナは誰も追いつくことのできない思考スピードと閃きを連発し、十重二十重に構築された守備陣を一瞬で破壊しつくす。ロジックを超えた天才がピッチ上で躍動していた。ベオグラードの試合で、2メートル近い長身ゴールキーパーと対したマラドーナは、軽々とチップキックで頭上を抜いて得点する。観衆は沈黙し、その後に大歓声。このスタジアムで「敵」への拍手はありえない。だが、ありえないことが起こった。状況を一瞬で把握し、誰も考えつかない、予想の斜め上の選択をし、完璧な技術で成功させ、世界中を裏切り、驚かせ、熱狂の渦に叩き込む。クストリッツァの言う「時代のリーダー」の姿がそこにあり、またそこにしかない。「神の手ゴール」を是とする人なら必見である。

(西部謙司)

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