秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3 http://鷹の爪.jpは永遠に : インタビュー
大人気Flashアニメ劇場版第3弾「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3/http://鷹の爪.jpは永遠に」が完成した。未曾有の経済危機を跳ねのけ、不況に負けない“鷹の爪ブランド”で勝ち組であり続ける監督のFROGMANが、ヒットの方程式や、日本映画界の現状、今後の進むべき道などを熱く語った。(取材・文:鴇田崇)
FROGMAN インタビュー
「島根の山奥でFlashでアニメを作っていて、4年間でここまできたのは御の字」
――世界同時不況の影響か、映像コンテンツビジネスが厳しい現実に直面しているなか、「鷹の爪」シリーズは絶好調ですね。不況に負けない映像コンテンツ制作の勝利の方程式は何ですか?
「コストを抑えて安く作ることに限りますね(笑)。ただ、最近感じることは、ギャグはもちろんですが、時事ネタが強いということ。昨年のテレビシリーズにも盛り込みましたが、事業仕分けなど政治のワイドショー化が続いているためか反響が大きかった。それも10代を中心とした若者にうけている。彼らは夢見たいな話を求めていると思っていましたが、そうでもないんですよ」
――確かに09年は流行語大賞にも選ばれた「政権交代」がメインイベントでしたからね。今回の劇場版第3弾では、鳩山由紀夫首相や蓮舫議員を超える、海外の超大物政治家が登場しますね(笑)。
「第45代アメリカ合衆国大統領ですね。オバマならぬ、オババですけど(笑)。でも、今回の映画では逆に分散複合体や核抑止力とか、10代を突き飛ばすようなネタがあって、女子高生に分かるのかが微妙ですが(笑)。いずれ小沢一郎ネタもやりたいと思っていますが、事務所も近いですし、本気で壊しにかかってきそうで二の足を踏んでいます(笑)」
――キャッチーな政治ネタがパワーアップしている一方で、「24」や「ダ・ヴィンチ・コード」を連想させるサスペンス・ミステリーの要素や、ラブストーリーなど映画的な奥行きもより増しましたよね。
「あくまで基本は“THIS IS 鷹の爪”ですが、第3弾にもなるとそういう欲求が出てきましたね(笑)。ちょうど『天使と悪魔』が公開されたのと、もともとレオナルド博士がヴィンチ家の子孫という設定だったので、これは面白そうだと思いましたが、宿命として動きがないので、説明的なセリフが増えてしまうわけです。うちのアニメでは複雑な話は語れないことがよくわかりました(笑)」
――ところで日本映画はヒットこそしていても、原作モノ、お涙頂戴モノ、ドラマ映画化モノが粗製濫造状態です。完全オリジナルで勝負するスタンスを貫く立場から思うことはありますか?
「正直、僕だって有名な原作を扱いたいと思います(笑)。有名なタレントを使えば、マスコミだってもっと騒ぐよな~というジレンマもあります。が、もともと島根の山奥にこもってFlashでちまちまアニメを作っていて、4年間でここまできたのは御の字ですよ。あの『ONE PIECE』でさえ、10年間という積み重ねがあってこその大ヒットを叩き出している。逆に原作モノを任せられても、期待に応えられるかどうか不安(笑)。『鷹の爪』はたかだが3年ぐらいなので、まだまだ新人監督の域を出ないレベルです。映画を3本も撮れている状況は光栄だと思っています」
――とはいえ今回はギャグだけでなく、映画的な要素をより増やすなど、これまで以上に意欲が感じられます。次回作となる劇場版第4弾で、期待以上の演出を考えているのではないですか?
「次回作ですが、4は数字的な縁起が悪いので、いきなり“第5弾”でいこうかなと(笑)。ただ、日本映画界の現状を思うと、有名な原作を扱わざるを得ない状況がよくわかります。すごく楽ですからね。勝負すればいいのにと思いますが、勝負できない最大の理由は何よりもお金でしょうね。うちが決定的にオリジナルで勝負できる理由は製作費です。巨費をかければ、いい作品ができることは間違いないですが、今後は、きちんとお金とエンターテインメントの関係性を見つめないと、いずれ日本の映画界は破綻するかもしれません。若いうちはタダでも働くスタッフはいますが、生活が苦しいので30代になれば辞めていく。そういうことを繰り返している現状があるわけです。そこに誰かが警鐘を鳴らさないといけない。僕は実写映画のスタッフをしていた時代に制作部にいたので、製作費の使われかたを知っていますし、逆に言うと誰よりも製作費を上手く使う自信があります。もし僕が次回作で100億円を自由に使えるのなら、今回VFXを担当してくれた白組を買収してすごい日本映画を作ってみせますけどね(笑)」