劇場公開日 2009年12月26日

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「1年間。ずっとこの日が来るのを待ち焦がれていた」海角七号 君想う、国境の南 septakaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.01年間。ずっとこの日が来るのを待ち焦がれていた

2009年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

約1年間
この日が来るのを
ずっと待ち焦がれていました。

①2008年アジア海洋映画祭イン幕張で見逃す(泣)
②“逃した魚は大きいぞ!”
 その後、台湾で社会現象化するほど記録的大ヒット。
 最終興行収入は、台湾映画史上2位を記録。どんだけスゴイかと言うと
 1位は『タイタニック』だけで、『ロード・オブ・ザ・リング』とか『ハリポタ』の
 シリーズなどを上回ってしまったこと。更に付け加えておくと、2005年の
 台湾映画マーケットシェアの95%がハリウッド作品なんです。この作品が
 公開された2008年、台湾内製作作品に明るい光は見えてきていたようですが、
 それでもマーケットに劇的な変化はなかったでしょう。つまり、ほとんど注目されない
 シェア5%の中から、台湾映画史上2位を記録するなんて、まさに“奇跡”なんです!!

当然のことながら公開初日2回目にダッシュで駆けつけました。

上映館のシネスイッチ銀座。
1回目、行列が道路にはみ出しているのをチェック。
2回目、行列が道路にない。なんと、道路に並ばすのは危険と
劇場側が判断したのか、もうヒトツのスクリーンがある3階に並ばせていました
(注意:この映画館は、シネコンのような指定席でなければ、ミニシアターのように
    整理番号順でもないため、徹夜組さながらに早めに来て並ぶしかないのです)

2回目の先頭集団にいた人は、
1時間以上も前からならんでいたそうで、
当然、1回目も2回目も、立見が出る盛況。

それには、先に書いた話題性だけでなく、
公開初日・2日目、全部の上映回で舞台挨拶開催と、気合の入りかたが半端じゃない。

チケット半券を係員に切ってもらうや否や、
自由席ですから、座席を求めて、猛ダッシュ。
前から2列目、中央よりを無事にゲット!!

まずは、上映開始前の舞台挨拶スタート。
主演の、田中千絵さん。感極まって涙ぐむ場面もありました。
私の回はメディアが入っておらず、次の回にマスコミ取材が入っていました。

「(次の回で、同じように泣いてこそ女優だぞ)」と思っていたのですが、
翌日のWEB上には、感極まっていた、と記事が載っていたので無事に泣けたようです(苦笑)

☆彡     ☆彡

なるほどね
こういう作品だったんですね(フムム)

ウェイ・ダーション監督。
・台湾と日本の人に観てもらいたいと思い作った
・新聞に載っていた記事がラブレターだったらロマンチック
・一番作りたい作品(現在製作中)に誰も資金を出してくれない
 だったら、自分が“商業映画”を作れることを証明してやる、と今作を製作した

待ち焦がれていた作品ですので、
他にもありとあらゆる情報を仕入れて鑑賞をし、
上映終了後に頭に浮かんだ感想が、冒頭の2行。

実は、ちょっと複雑な気分でした。
それは、“日本のテレビ映画”に、
ストーリーの運び方、音楽が似ている気がしたからなんです。

日本の映画関係者って
“テレビ映画”って、今上映されている作品だと
『のだめカンタービレ』とかを、見下すと言ったら言い過ぎかもしれませんが、
小バカにする傾向があるじゃないですか。でも興行成績を見れば、例えば、
2009年の1位は『Rookies-卒業』ですよね。バカにしてはいますが、
お客さんが一番観たい作品は、テレビ映画だって、ことになりますよね。

“商業映画”
あえて括ったのは訳がありまして
台湾製作映画って、“芸術性=アート性”作品によりすぎて、現地の人に
敬遠されていた面があったんです。現在それを見直す機運が高まっており、
“商業性=現地の人に受け入れてもらう”に非常に気を使い始めているんです。

とは、いいつつも、『台北に舞う雪』は未見ですが、直近の『お父さん、元気?』とか
『ヤンヤン』とか、『九月に降る風』とかって、アート性=わかりにくさが残っているんです。

おそらく、どこかに映画人としてのプライドが残っているからだと思うのですが、
今作、そのプライドを完全に取っ払ってしまっている、かなぐり捨てているように感じたんです。

BGMには、ラストのコンサートシーン以外では、日本のドラマっぽさを感じましたし、
ストーリーのラストの演出には「さぁ、ここが感動所だよ」韓流映画のクライマックステイストを
色濃く感じさせられました。次回作には、韓国スタッフ・日本スタッフにお願いする部分があると
コメントを残しているくらいですから、韓国・日本の作品を、相当嗜んでいるような気がします。

監督自身が表現したいことを入れつつも、
台湾のお客さんがもっとも望んでいるシナリオにする。

台湾内でのセールスプロモーションも、これまでの台湾映画にない
型破りな方法だったそうですが、シナリオについても、もしかしたら
台湾内のヒット作の分析にとどまらず、事前にマーケティングもしたのではないでしょうか。

ですので、日本で公開する映画館も、
シネスイッチ銀座のようなアート系の聖地ではなく、
本当なら、メジャーなシネコンで上映すべきだとおもうんです。

そこで『のだめカンタービレ』とか『ワンピース』とか
観に来たけど満席だから、これでも観てみる?とフラッと
立寄ってもらって「期待してなかったけどよかったじゃん」と
クチコミで評判を広げてもらうべき作品じゃないかと。

現在の上映館を主に訪れるお客様の趣向とマッチしていない。
イコール、評判は落ちてしまいますよね。順次全国公開されていくのが
決定していますが、その辺りを配慮してもらえれば、今作の評判だけでなく
日本国内における、台湾映画のポジションも上がってくる気がします(笑顔)

☆彡     ☆彡

日本人お二人の演技は、正直イマイチ。
台湾語・北京語・日本語が入り混じりますが、
同じく日本語を含めた複数の言語が入り混じる
『新宿インシデント』の完成度の高さと比べると・・・って感じでした。

最大の驚きと疑問は、7通の手紙の日本語。
脚本のクレジットには、ウェイ・ダーション監督の名前が
出ていましたが、日本人じゃないと書けないだろうと思われる表現もあります。

上映終了後のお客様には明るい表情が目立ちました。
作中のセリフにならい「私の中国語も、あんな風に思われてたのかなぁ」なんて、
そこに喰いつくんだ、なんて突っ込みたくなる感想を笑いながら話していた人も(苦笑)

これだけ熱く語ったのですから、
私の中での衝撃度はA+ではとても足りませんが、
あくまで、作品単体での評価をつけるとA-です。

現在製作中の作品は、
今作の大ヒットを受けて資金提供は増えたものの、
足りず、監督が自腹を切るなんて話も耳にしています。

最新作も、楽しみにしています(笑顔)

septaka