花のあとのレビュー・感想・評価
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堅実で丁寧な演出
中西健二監督はなぜかwikiもない映画監督ですが青い鳥という名作を撮っています。青い鳥ゆえ、ググったときぞろぞろ違うものが検索されそうなタイトルに難はありますが、個人的にはカルトだと思います。
この映画と青い鳥を見ると中西監督の秀でた演出力が解ります。主張はしませんが堅実で丁寧なのです。
山田洋次の藤沢周平がアクション映画としてカウントされることは無いのですが、殺陣シーンでは緊張が走ります。実質的にはその「寡」をもって、たとえば無限の住人の大量殺戮を凌駕していると思います。そのように掉尾へ向かって紡いで、切羽詰まらせるのが藤沢周平の復讐劇です。案外、コミックを翻案した時代劇より、はるかに高い興奮度を持っていると思います。
この映画の特異性はひとえに女侍ということです。
戦う女性はありふれたモチーフですが、邦画中ではICHIやあずみが時代劇として類似するかもしれません。近現代なら極妻か女囚か刑事か、あるいはスプラッター系かコスプレ系か露出系になるのでしょうか。総じて海外は戦う女性が巧いのですが、日本のばあいアニメを除けば戦う女性に拙い印象があります。
前述のごとく藤沢周平がアクションにカウントされることはありませんが、この映画の以登は、考証と現実味を備えた剣の使い手であり、骨格のあるヒロインでした。偏りのある言い方なのは認めますが、有りそうで無かった、まともな戦う女性の実写映画だと思います。絶対的な希少性でした。
以登が復讐を決意するのは、たまたま父を訪れた孫四郎と手合わせをしたのがきっかけでした。弱石高の三男ですが使い手です。
いざ手合わせをしてみると孫四郎は女子の剣であることをあなどりません。また組頭の令嬢であることをおもねりません。以登と真摯に勝負したのです。
それを太刀筋で理解した以登は孫四郎に恋心を抱きます。
ところがその後、孫四郎は江戸詰になったものの御用人藤井の奸計に遭い切腹を余儀なくされてしまいます。
以登の復讐は孫四郎と手合わせをしたときの回顧によるものです。真剣に打ち合ってくれた孫四郎が忘れられず、その孫四郎を切腹に陥らせた藤井の謀が許せません。「ただ一度竹刀を合わせただけ」それだけのために命を懸けます。
それらのくだりを丁寧に描き終局の果たし合いへ持っていきます。丁寧に描くほどに、果たし合いが怒濤の興奮度を孕んでくるのです。藤沢周平の独壇場でした。
余談ですが、日本の時代劇では、役者はしっかり化粧しきれいに結い汚れもほつれもなく、建造物やロケーションもしっかり整備されていることが多いのです。個人的にその垢のない世界がとても気になります。
スポンサーや製作委員会の都合ではアート/リアリティへ落とせないのかもしれませんし、大河ドラマに画面が汚いと文句をつけるほど潔癖な人もいますので、一概には言えませんが、映画世界にはそれに見合う不協和が必要だと思っています。
私なら画面がきれいと文句をつけるでしょう。
世の中にはきれいで興醒めする人もいるわけです。この映画も危うく興醒めするところでした。しっかり見て良かったと思います。
ちなみにだいぶ前に見たのですが、私はこの映画でそれほどでもなかった北川景子が好きになりました。また甲本雅裕がいつもながらいい味を出していましたし、市川猿之助の憎まれ役も既に堂に入っていました。
女性剣士
許されぬ恋ではあったが、一度剣を交えたときに運命を感じた以登。切腹の報せを聞いたが許婚の才助(甲本)の情報もあって、孫四郎の妻が藤井(市川亀次郎)と密通があったことや藤井の賄賂の事件を探り当てる。やがて、才助にも協力してもらい藤井を討つことを計画するのだった。
藤沢作品もかなり映画化されつつある中、女性剣士が主人公になるのは初めてだ。この藤沢作品の良さとなる山形の四季を大切にし、純愛を貫くところがやっぱり素敵だ。北川景子が主役ということで期待はしてなかったのだが、彼女の表情がいい!正面から見ると、下唇が色っぽすぎるけど、不倫中の伊藤歩の悪賢そうな唇とは対照的でもあり、純愛ぶりが伝わってくるようだった。セリフ回しはちょいと難点・・・
全てを理解し、優しく包み込み、仇討(正確には違う)にも一歩下がって見つめている甲本の役どころは美味しい。男はこうあるべきか。
いい役者だ!
凛とした美しさ
拙ブログより抜粋で。
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一歩間違うとただかったるいだけのゆったりとした時間の流れに、中西健二監督の信念が滲む。
じっくりと時間を掛けて描かれる細やかな所作が、美しい“和”の伝統を伝えるとともに、この時代の厳しさも伺わせる。
そんな時代を生きる以登が貫いた恋、そして見つけた愛。
それまでのじれったいほどの時間の流れがあるからこそ、女一人で挑まんとする立ち回りに手に汗握り、ラストシーンのただ歩き続ける姿に感動がわき起こる。
このラストシーン、ほんとに素晴らしい終幕だと思う。実は予告編にも含まれていたのだが、映画のラストシーンとして観たとき、その見え方がはっきりと違う。
想いを貫き、それを果たした充実感。新たに見つけた愛の後ろ姿。
丁寧に一々の所作を捉えた演出はまるで時間が止まったかのような錯覚に陥らせるが、最後の最後で1カットで捉えた延々と歩き続けるその姿には確かな未来が見える。
(中略)
映画自体が凛とした美しさを湛え、チャンバラとは違う時代劇の良さを今に伝える。
咲き誇る桜を愛でるように、ただ静かに日本の良さに感じ入る。
素晴らしい佳作だ。
北川景子の挑戦
実でも、種でも。
藤沢作品が好きなので、臆することなく観に行った。。
北川景子が時代劇…?という不安(おそらく本人も)な
配役に驚きつつ、冒頭の違和感が抜けていく成長ぶり、
劇場はやはり(爆)中高年の嵐だったが、彼女のことを
知っているオバさま方は一体どのくらいいたんだろう?
「この子知らないのよね~」という声が方々で聞こえた。
武士の家に女として生まれてしまった負目からなのか^^;
剣の道を極めてきた主人公の以登。すでに許婚も決まり、
あとは彼の帰りを待つだけの日々。そんな中、同じ剣術
の達人で下級武士の江口孫四郎と花見の席で出逢い、
試合の約束を交わす。手抜きをせず竹刀を交えてくれた
彼に恋心を抱く以登だが、もう彼と逢わぬよう促される。
孫四郎の縁談も纏まり藩命で江戸に向かう彼だったが…。
冒頭のぎこちなさが中盤以降で段々と解けて、ラストの
仇討ちのシーンは意外にも鮮烈な印象を残すまでになる。
北川景子の無口で芯の強い女剣士ぶり、許婚に扮した
甲本雅裕の体たらくのようで実はキレ者という男前ぶり、
「人は見かけに依らぬもの。」
を地でいくような、面白さが後半で幕を開ける。
昨今の若い人は何かとすぐ「キレる」みたいだけど、
本当のキレ者とはこういう頭の使い手を指す褒め言葉。
どうせキレるならこっちでキレてみせてほしい^^;
完成度の高さよりも、清々しい余韻を残した佳作。
惚れた。斬った。晴れた。の単純さが却って心地良い。
(これも桜がキレイな作品。正坐で花見。はムリだけど^^;)
爽やかな気持ち
北川景子ファンとしてはもう少しやきもきか幸せ感がほしい
全体的に優等生に話をまとめすぎて引っかかる何かが無くなっています。 画はきれいですし、許嫁の心の広さも感じられるが、主人公「いと」の動機が希薄。北川景子がきれいに撮れているので、ストーリーにとげがないのが、印象を薄くしています。観客が、恋に落ちるか、失恋するかどちらかに振るべきだったと思います。 北川景子ファンでしたら、スクリーンでアップを堪能できるので、良しと思います。 評価に無関係(か?)ですが、まつ毛がカールしているのにもっと早く監督気が付かなかったのでしょうかね?途中でストレート。
あれで、ピアスの穴なんて出てきたら、ショックですね。
爽やかな後味が残りました♪
藤沢周平原作。
原作は未読で向かいました。
まもなく
劇中のように
桜も満開になるのでしょう。
劇場は自由席。
劇場の思惑通り約10名ほどとガラガラでした。
☆彡 ☆彡
爽やかな後味が残りますねぇ(笑顔)
映画の中身よりもチラチラと垣間見える
北川景子所属事務所の思惑のほうが気になったんですけど(苦笑)
時代劇ですから
当然なのですが、
とても“和”の情緒溢れる作品でした。
それは時代ある家や衣装だけでなく
半年間練習を重ねたという殺陣や、
扉の開け閉めなどといった細かい
所作からもにじみ出ていました。
要領よく
効率よく
なにごともせっかちな時代
孫四郎の器の大きさとともに
昔に学ぶべきことの多さを痛感させられました。
◇ ◇
北川景子さん、
かなりサマになっていました。
殺陣、剣術シーンだけなら
『ブザー・ビート』で仲良くなったという
『龍馬伝』出演の貫地谷しほりさんのほうが上ですけどね(苦笑)
今まで現代劇では
見せたことのない清楚な姿に驚きました。
今作のように
強気でありながらも
ときに女性らしい恥じらいをみせ、
男性をたて一歩うしろにひいてついていく。
新境地といえなくもなく、
藤沢周平原作というところからも
従来とは異なるファン層を開拓に来た気がしました。
彼女
フジ月9のヒロインを演じたとはいえ、
綾瀬はるかさんが持つ1位の潜在視聴率には、遠く及びませんからね
(ちなみに2位は佐々木希らしい)。
『間宮兄弟』の
お姉さんも復活しました(「別に」の人)。
これからが正念場ではないでしょうか。
☆彡 ☆彡
と、なんとなく
北川景子さんの
人物レビューみたいに
なってしまいましたが、
役者さんの演技、存在感もよく、
スローでありながらも、決して、
だれることのない、良い作品になっていました。
北川景子さん、
テレビ朝日の枠を超え、
いろんなメディアに登場して、
一生懸命、今作の宣伝をしています。
若い女の子が
キャー!キャー!
黄色い声を上げて
応援していますが、
今作のターゲットとはずれている気が。
『はなまるマーケット』はドンピシャでしたけど(苦笑)
1,800円の一般料金に見合うかどうかで
B+にしようか、A-にしようか、
迷うのですが、モーニングショーなどの
サービス料金ならアリだと思いますので、
A-に近い、B+とさせていただきます。
私は、北川さんのファンだから
普通に、満足はできましたよ(笑顔)
昔の人が似合うのかな。
北川景子の殺陣シーンが素晴らしい。けれども・・・
海坂藩の堀端は、春爛漫に桜が咲き誇り、
水面にその花弁を敷き詰めていた。
枝に留まる花びらも、一片二片と舞い散り、
華やかりし花のあとの、
寂静が忍び寄っていたのだった。
人の一生においても、華やか時のあとは、寂しさばかりが募るばかり。けれども主人公の以登は、若き頃の一瞬の華を何十年も忘れず、大切に仕舞って、心の糧としていたのでした。
満開の桜の下で以登に声をかけたのは、羽賀道場の高弟・江口孫四郎でした。父・寺井甚左衛門に剣の手ほどきを受けた以登は、道場の二番手、三番手を破るほどの剣豪だったのです。わずかでも孫四郎の人柄に触れた以登は、父に孫四郎との手合わせを懇願します。
念願叶って、孫四郎と剣を交えたとき、女だからと手心を加えない真剣さに、一瞬で胸を焦がしてしまった自分がいることに気がつきます。ただ一度の手合わせで以登が感じたものは、紛れもなく初めての恋とかなわぬ想いでした。
どんなに思い詰めても家が定めた許婚がいる以登は、孫四郎への想いを断ち切ります。 許婚の才助は、粗野で大飯ぐらい。生理的に嫌悪感を感じてしまった以登は、婚儀が済むまで、指一本も触れることを許さぬくらいに、才助を拒み続けたのです。
その数ヵ月後、孫四郎が藩の重役・藤井勘解由の卑劣な罠にかかって自ら命を絶ってしまいます。江戸から帰国した才助の手を借りて事件の真相を知った以登は、孫四郎の無念を晴らすために、そして自らの淡い想い出のために剣を取るのでした。
才助は以登の想いをわかっているにも関わらず、笑って気安く彼女を手助けします。凡庸な人物なら、そう簡単には感情を殺せないだろうと思います。そうに見せてしまう才助の心の広さと非凡さが意外でした。
才助は後に家老に出世して、昼行灯と呼ばれたと老いてからの以登が語っていました。 そんな以登の一途さと、それを優しく包み込む才助の心象に心が沁いくような「原作」だったのです。
映画では、随所に冬の鳥海山が写し込まれて、映像美溢れるところは、監督が替わっても『蝉しぐれ』『山桜』とシリーズ共通のこだわりのようです。
冒頭の以登と孫四郎が桜の下で出会うところも、凄く『山桜』に似ています。ただ、ここから数シーンに渡って、ふたりの台詞が完全に棒読みで、興ざめしました。なんであんな演出をするのか、理解できません。
宮尾俊太郎の映画出演は初めてなので、経験不足だったのかも知れません。孫四郎の演技に固さを感じました。『山桜』の冒頭のふたりが出会うシーンが、凄く良かったので、本作でも、孫四郎に東山紀之クラスの俳優を投下したら、もっと引き締まった作品となったことでしょう。
比べてみますと前作『山桜』の篠原哲雄監督の演出が、際だって良かったですね。
それでも、北川景子の殺陣には感動しました。素人目にも半年間みっちり鍛錬に励んだという努力の跡が感じられました。敵役の藤井を演じる市川亀治郎と果し合いシーンでは、尋常ではない気迫で迫ってくる亀治郎に、五分で殺陣にぶつかっているのです。役者としてはどんなに恐かったことでしょう。
この真剣さに加えて、孫四郎との試合の後、一瞬覗かせる女しての恋する顔、この素早い変化を演じ分けられたからこそ、たった一度の出会いで抱く恋心が、その後の仇討ちに繋がる展開に現実味を持たせてくれました。
シリアスな展開のなかに、剽軽さをもたらしてくれるのが、才助の存在。ポーカーフェイスを気取りつつも、一度行動すると、持ち前の巧みに人を動かす才能を発揮するなど、一見馬鹿のように見えて、なかなかドラマのキーマンとなっていました。しかも抜け目なく以登を見守っていて、ピンチの時どこからともかく現れて、仇討ちの後始末を引き受けます。(何故か剣では加勢しようとしなくて、見殺しにしていたのが気になりましたけど)そんな才助を表情豊かに演じた甲本雅裕の演技も、良かったです。
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