劇場公開日 2010年9月25日

十三人の刺客 : インタビュー

2010年9月21日更新
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「後半50分はずっと戦闘シーンという話は聞いていたので、どれだけ地獄かと思っていたけれど、実際に現場も血まみれ泥まみれで大変。でもそれ以上に、でき上がったシーンは見応えがありました。単純明快でありながら、すごく大事なテーマをもった映画として、見ていて気持ちがいい。僕は、自分が出演している作品を最初に見るときはなかなか楽しめないんですけれど、この映画はすごく楽しかった」

その中で、伊勢谷自身の撮影部分について尋ねると、「やれる部分はやるし、僕じゃない方がうまくいく部分は、役者として譲ることも責任のひとつだと思う。無用な意地は消しました」と、作品全体を考慮する冷静なところも心憎い。

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「十三人の刺客」は、第67回ベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品された。伊勢谷にとっては同じ三池監督の「ジャンゴ」に続く選出だが、時代劇が選ばれたことにはひと味違った思い入れがあるようだ。

「皆のあこがれる侍は切腹で命を落とすだけじゃなく、自分が変えるべきだと思ったものに対して全力で取り組む。そういう意志をもっているのが侍だと感じてほしい。外国の人には、とてもいい刺激になる映画。50分の戦いを中心に、エンタテインメント作品でありながら大きなテーマをきちんと伝えている。侍映画の金字塔だと思っています」

「完全に自分のことを忘れてしゃべっている」と謙そんするものの、これだけの自己評価ができるのは自信の表れ。事実、小弥太はコメディ・リリーフ的な役割を担いながらも、緊張感をそぐことなく、刺客の1人としてしっかりと作品世界を彩っている。そんな独特の世界をつくりあげた三池監督に対しては、賛辞を惜しまない。

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「尊敬する監督であり、子どものように現場を遊んでくださる姿は、作品に携わるひとりとしていつも楽しみです。今回の僕の役もコミカルな部分がありますが、どこにもチープさがない。三池さんの作品の中でも、ここまでシリアスなものってないのではと思うくらい。これからもいろいろな形でご一緒できたらと思う」

三池監督作品には、伊勢谷に限らず常連といわれる俳優が多くいる。なかでも石橋蓮司は、出演シーンのどこかで必ずしゃもじを持っているのだという。そういった遊び心が、俳優からのラブコールが絶えない要因だろう。伊勢谷も「僕もそういうのが欲しいです」と訴えていた。

2008年の日本・ブラジル・カナダ合作「ブラインドネス」で、カンヌ映画祭のオープニングを経験。最近はNHKのスペシャルドラマ「白洲次郎」、大河ドラマ「龍馬伝」では高杉晋作と、テレビドラマで歴史上の人物を演じるなど役の幅を広げ続けている。来年2月公開予定の「あしたのジョー」では、力石徹に扮するため「もう2度と無理」という10キロの減量をし、体脂肪率を15%から3~4%に落とす徹底した役づくりに挑んだ。

三池作品に限らず、今後やってみたい役は「ルパン三世」だという。理由は「大好きだから」といたってシンプル。長身痩躯(そうく)の伊勢谷が演じるルパン……ぜひ実現することを願う。

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