十三人の刺客 : インタビュー
伊勢谷友介「十三人の刺客」で再認識した三池崇史の底力
伊勢谷友介が、三池崇史監督の最新作「十三人の刺客」で時代劇に初挑戦した。暴君暗殺の密命を帯びた集団に、最後に名を連ねる山の民・木賀小弥太という役どころ。望んでいた侍の役ではなかったものの、敬愛する三池崇史監督の下で躍動し、特に映画史上最長といわれる50分の決闘シーンでは強烈なインパクトを残す。「侍映画の金字塔」と自負する作品において、“13人目の刺客”は存分に個性を発揮している。(取材・文:鈴木元、写真:堀弥生)
「侍の役をやりたかったんですけどねえ」
伊勢谷は苦笑いでそう振り返るが、表情は充足感に満ちていた。それもそのはず。2007年「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」でほれ込んだ三池監督からのオファーを、受けない理由はない。加えて、役所広司扮する主人公・島田新左衛門のキャラクターに魅力を感じたという。
「責任感が強いというのは、現代でも大事なこと。死に物狂いでやることが当たり前じゃなくなっている時代にあって、強い意志をもった主人公に引っ張られていく脚本は魅力的。役所さんの設定がすごく好きだったんです」
時の明石藩主・松平斉韶の暗殺という密命を受けた幕府御目付の新左衛門ら精鋭12人が、決行の場所に定めたのが落合宿。その途中、山で道に迷った一行と出会い、後に加勢することになるのが小弥太だ。武士とはいで立ちも違えば、生き方も異なる野人である。
「皆と違い所作を一切気にする必要はなかったけれど、その分、自由さを背負わなければいけなかった。そこで野人っぽい要素を、体を動かすことで表現するという演技プランを立てた」
だが、その構想は三池監督によってあっけなく壊される。撮影初日が、ワナに捕まり木につるされた小弥太が、一行に助けられるシーンでは動くどころではない。その後も、「ジャンゴ」で経験済みだったものの、三池流の演出にいい意味でことごとく裏切られていった。
「かごでつられて、そこから落とされて、その先は沼ですからね。ぴょんぴょんと身軽に動いて皆と絡むという僕の演技プランは最初から総崩れで、後は三池節に導かれて最後までいった感じ。でも、脚本にない演出が現場で急にあらわれることは、役者としてすごく楽しい。体力的には、とても大変なんですけどね」
本当にうれしそうに語る伊勢谷からは、三池監督への信頼、尊敬の念がのぞく。幾多の困難があればこそ、それを乗り越えた先にある喜びはひとしおなのだろう。その象徴が、要塞(ようさい)と化した落合宿での13人VS300人超の決闘。小弥太は刀を持たず、自作の投石器や立てかけてある角材などを巧みに利用し、敵をなぎ倒していく。