劇場公開日 2010年9月25日

十三人の刺客 : インタビュー

2010年9月21日更新
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己の力で可能性を切り開く現代の“侍”――伊原剛志

質実剛健――「十三人の刺客」での伊原剛志を形容するのに、最もしっくりとくる表現ではないだろうか。寡黙だが、忠義に厚い浪人・平山九十郎という役どころ。刺客の中で唯一、人を斬ったことのある剣豪だからこそ、クライマックスの戦闘シーンではすさまじい殺気で敵を討つ。豊富な経験に裏打ちされた殺陣は、豪胆さと優雅さを併せ持ち、50分に及ぶ激闘の中でも大きな見せ場のひとつとなっている。伊原自身も「まあまあやりきったかな」と充実感をにじませ、「これぞ本格時代劇といえる作品」と自負する出来ばえとなった。(取材・文:鈴木元、写真:堀弥生)

(C)2010「十三人の刺客」製作委員会
(C)2010「十三人の刺客」製作委員会

「最初から最後まで画面に緊張感があり、物語を運んでいくパワーがすごくあった。自分も出ているんだけれど、一緒に見ながら戦って、引っ張られて引き込まれて、見終わったらアスリートが競技した後のように“あ~、終わったあ”みたいな感じ。すごく力強い作品になっていると思う」

「十三人の刺客」を2回見た、伊原の率直な感想である。自身の出演作に客観的評価を下すのは難しいものだが、冷静に見られたという2度目でさえも作品世界に引き込まれたのは、昨今の時代劇に対する疑問が解消されたからだ。

「時代劇って、そこに生きていた人はいないわけだから、何が本物かというのはないけれど、今の若い人がやっている時代劇は何かちょっと違うんじゃないかと思う。この作品は、老中の平幹二朗さんをはじめ出ている役者さんが見ている人をその世界に引き込んでくれる。衣装やメイクもこだわっているし、僕らが自然に役の中に入りやすい環境ができていた。そういう意味で、本格って言ってもいいんじゃないかな」

(C)2010「十三人の刺客」製作委員会
(C)2010「十三人の刺客」製作委員会

伊原自身、殺陣や居合いに通じ、時代劇の経験も豊富。「マネジャーと、アクションをやりたいと話していた」というタイミングで出合ったのが「十三人の刺客」だった。時代劇は、NHK大河ドラマ「新選組!」以来6年ぶり。しかも、三池崇史監督には「クローズ」などで、かねて一目置いていたという。

「いろいろなテイストを撮っていて、特にアクション・シーンがすごいなと感じていた。どんなふうに撮るのかなと思っていたら、“正面から時代劇を撮っていきます”と言っていたので、現場に入ってやりながら自分のポジションを探っていった」

平山九十郎は、1963年の工藤栄一監督作では西村晃が演じた。藩主暗殺の密命を受けた御目付役の島田新左衛門(役所広司)に恩義があり、それを返すために運命をともにする決意をする。余計な口は出さず、ただひたすら任務遂行に向けてまい進する侍だ。どこか孤高のイメージも漂う。

「監督と、13人の中で唯一、人を殺したことがあるのが平山だという話をして、立ち回りをやっていないときでもそういう臭いを、どうやって出していこうかということを考えてやっていた。自分の中にある静の感情を、なるべく使いましたね」

インタビュー2 ~己の力で可能性を切り開く現代の“侍”――伊原剛志(2/2)
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