「精神的な強さ優しさがパワーアップ」THE LAST MESSAGE 海猿 MAPLEさんの映画レビュー(感想・評価)
精神的な強さ優しさがパワーアップ
3D上映時から何度も観ているのにまたTVで見てしまう。
仙崎の人生が進み、より一層深みを増している。個々の心の機微、組織の視点、絆、人材育成、かなり多角的に見れる作品。
仙崎も、第1子誕生後も変わらず人命救助の危険な任務に就いている。今回は天然ガスプラント事故。設計者はやりづらい性格。そんな中、またまた取り残される。
2人ともお先真っ暗とわかっているのに、救助者のためにも必死で軽く明るい空気を保とうとする、仙崎と吉岡の固い絆が泣ける。
仙崎は守るべき愛する環奈や幼い大陽もいるのに、どれだけの不安や恐怖を抑えて周りのために徹しているのか、考えただけで苦しい。身体も、気持ちも、自分も余裕がない中で、こんなに捧げられるだろうか。人徳がすごい。
そこへ追い打ちをかけるかのように、新米潜水士服部の人間らしい泣き言。なんだかんだで救助能力は海保の中でエリートの服部でも、精神的に追い詰められる環境で怖いのはごく普通の感情。こいつとバディーを組んで命を預け合うのは不安だな、と思わざるを得ないはずだが、寄り添い励まし、バディーとして全うした結果、今回は仙崎が足を折り取り残され、一夜にして成長しまくった服部が助けに来てくれる展開。仲間を信じる大切さを痛感させられる。
国の国家プロジェクトにこだわる吉森と、海を上がり陸で偉くなった下川の、助ける価値のある命なのか?、質問の意味が全くわかりません!のやりとりは作品の要。ラストシーンで、それぞれの命には家族があり、どの命も尊い事を吉森はやっと悟ったようだが、まだ意地をはる。吉森をも悟らせる人材育成を、仙崎はじめ、潜水士の上司としてして現場で行ってきた下川にも感服する。とはいえ、ガラリア、沈もうが沈まなかろうが、どっちみち事故物件として1500億はパーなんじゃ。そもそも、1500億なんて日韓露合同国家プロジェクトにしては、大した額じゃない。
潜水士達を支える人達の気持ちにも、今回も焦点が当たっている。子供が産まれて尚更、いつ仙崎に死なれても子を守らねばと強くなる一方、不安を抱え込んで1人で解消する事を余儀なくされている環奈。チャラついていたが、海猿での工藤の死を目の当たりにし、命への向き合い方が変わっている香里奈。環奈は海保の社宅なのか、団地暮らしで出版社や衣装デザイナーだったかつての風貌ではないが、仙崎と温かい家庭を築いている。だからこそ、失うなんて辛すぎる海保の職業。仲村トオルが遺した妻子の回想もあり、綺麗事ばかりでないところが重みを増す。
そして、今見ると原発事故での作業を彷彿とさせられる。命を徹して放射能環境で作業をしてくれた作業員の方々にも、それぞれ人格や家族があった事を想像すると心が痛い。