劇場公開日 2021年2月26日

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REDLINE : インタビュー

2010年9月27日更新

製作期間7年、作画枚数10万枚という途方ない時間と労力を要して完成したオリジナル長編アニメーション「REDLINE」。同作を生み出した2人のクリエイター、「アニマトリックス」にも参加した気鋭の監督・小池健と、「キル・ビル」アニメパートで世界に名を知らしめた原作・脚本の石井克人にインタビューを敢行。2人が徹底したこだわりについて語った。(取材・文:編集部)

世界を知る小池健監督&石井克人だからこそのこだわり

世界でも注目されるクリエイターがこだわりぬいた「REDLINE」
世界でも注目されるクリエイターがこだわりぬいた「REDLINE」

――2003年の企画始動から7年。ようやく完成した気持ちは?

石井:「ここまでかかるとはまったく予想していませんでしたが、感無量ですね。世界中の子どもたちにやっと発表できるぞと」

「茶の味」「ナイスの森」などでもタッグを組んできた 小池健監督(左)と石井克人(右)
「茶の味」「ナイスの森」などでもタッグを組んできた 小池健監督(左)と石井克人(右)

小池:「当初は3年くらいでできるかなと思って始めた企画でしたが、やっていく過程でどんどんこだわりぬいて作りたいと、もっと時間をかけなければいいものはできないと確信をもって作っていったら、最終的に7年かかってしまいました」

――製作側からのプレッシャーはありませんでしたか?

小池:「それは特にありませんでした。現場には楽しんで作ろうという心構えがありましたし、バックアップしてくれる人たちも、好きなようにやっていい、難しいことは僕らでやるからとフォローしてくれました。やっていることは大変でしたが、楽しんでやっていました」

石井:「素晴らしい会社ですね、マッドハウスは(笑)。今どきこんなことを許してもらえることはないと思います。後にも先にもない、特例だと思います(笑)」

――小池監督は「アニマトリックス」で、石井さんは「キル・ビル」で海外との仕事も経験していますが、日本との違いなどを感じていますか?

「キル・ビル」アニメパートから刺激を受け 独自路線のアニメーションが誕生
「キル・ビル」アニメパートから刺激を受け 独自路線のアニメーションが誕生

石井:「僕が『キル・ビル』で感じたのは、本当に好きなものをつきつめているなということです。アニメーションのタッチにしても、日本ではそのときどきの時流があって、たとえば、今は萌えアニメが時流だから、その路線に合わせようということにもなる。ところが、あちらはギトギトのキャラクターデザインでも問題なくOKなんです(笑)。そこが逆に新しく感じました。昔、日本でも『タイガーマスク』や『カムイ外伝』といった劇画調のアニメがありましたが、そういえば最近見ないなと思い、『キル・ビル』のアニメを見て、自分でも作りたいと思ったんです。そのとき、ちょうどプロデューサーの木村(大助)さんから、小池監督ありきでなにかやりたいと相談され、この作品が始動したんです」

小池:「基本的に向こうは自分を表現しないと認めてくれない。僕が『アニマトリックス』をやったときも、合わせることよりも、自分を出してくれというスタンスでした。やりたいことをつきつめて表現することを許してくれる。“合わせる”ということと違うやり方ができるのが、すごく魅力的でした。ただ、日本でも石井さんの作品だとかなり自由にやらせてもらえるところがあります。僕はこれまで、石井さんと組んでやってきた短編で、一貫して自分のやりたいものを表現するように取り組めていたので、あまり海外と日本の違いは意識なく作業しています」

デザインに関しても、自分たちのスタイルを貫いた
デザインに関しても、自分たちのスタイルを貫いた

――時流と違うというところで、今回のちょっとアクの強いキャラクターデザインは、日本のアニメに慣れすぎている人たちに、受け入れられないのではという懸念はありませんでしたか?

石井:「懸念しても、時流に合ったキャラクターデザインはできないですから(笑)。自分らの好きなものをやるしかない。それに、時流に合わせたアニメが増えたことで、ある年齢層のアニメファンが去っていってしまったのではないかとも思いますし、そうした人たちを、この『REDLINE』でまた取り戻せるのではという気もします。たとえば松本零士のアニメが好きだった世代には、そうしたものがいつの間にかどこかへ消えてしまったと思っている人はいると思うんです」

――すべて手描きで10万枚も描かれたそうですが、歪みなどの独特の表現にアニメーターたちは苦労しませんでしたか?

レースシーンのスピード表現もすべて手描き
レースシーンのスピード表現もすべて手描き

小池:「按配(あんばい)をつかむというか、各スタッフに共通認識をもってもらうまでには時間がかかりました。まず冒頭のイエローラインというレースシーンを作らせてもらい、こういう感じの映画ですよというのを提示してからは、皆さんにどのレベルで作っていいかというのは分かってもらえました。そこが一番時間がかかりましたね。あとは、なんでこの時代に車やメカをCGでやらないのかという疑問はもたれていましたけど、僕らが子どものころに見ていたアニメは、当然CGなど全然ないのに、メカやSF要素に手描きの力強さやダイナミックさがありました。そうしたものを表現したいというのがありました」

――小池さんは長編映画初監督で、さらに作画監督や絵コンテ、キャラクターデザインまで担当してます。映画監督として先輩の石井さんから見て監督ぶりはいかがでしたか?

2人のコンビだからこそできた世界観は、ぜひ劇場で
2人のコンビだからこそできた世界観は、ぜひ劇場で

石井:「素晴らしい才能をもった監督だと思います。キャラクター、メカ、美術設定、衣装、レイアウト、コンテ……なんでもできますから。言ってみれば宮崎駿さんみたいなものですよね。そこまでやる人はいないですよ(笑)。以前、コマーシャルの仕事で別のスタジオと組んだとき、監督と2人で全体のトーン作りなどまとめてやりたいと相談したら、そんな人はいませんって言われたんですよね。普通は分業ですからって。そう考えたら、小池監督のようになんでもできちゃう人は、希有(けう)な存在だと思います。それで、せっかくなんでもできるんだから、なんでもやったらいいんじゃないかと(笑)。そのほうが世界観としてオリジナリティがガツッと出ますからね。その分、時間はかかりますけど(笑)」

小池:「今までやってきた自分のスタイルでもあるので、張り合いがありました。監督業は、長編だから大変かなという気持ちもどこかにあったんですけど、石井さんから、短編を組み合わせていくようなものだからという話を聞き、楽になりました。構えずにできる言葉をもらえてありがたかったですね」

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