「心地よい“おとなのおとぎばなし”」つむじ風食堂の夜 septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
心地よい“おとなのおとぎばなし”
“cineMusica”
リーフレットには映像と音楽の新たなカタチを創造、とあります。
今作は、そのシリーズの第7弾。
ちなみに、第6弾は『悲しいボーイフレンド』。
寺脇康文さん主演、寺島咲さんがヒロイン役。
この作品では渡辺美里さんの歌が脳裏に焼きついていますが、
今作に関しては音楽、スネオヘアーの名前しか頭に残っていない(苦笑)
音楽が残らなくても、
作品がよければイイジャン、と
慰めながら、作品レビュー本編へと向かうのでした。
☆彡 ☆彡
いやぁ、いい映画だったなぁ
本当に、あったかい映画だったなぁ
作中も冬、
映画館の外も夜も深まり
寒いはずなのに、とても
ぽかぽかと体を温めてくれる
まるで湯たんぽのような映画でした。
原作は未読。
函館の夜。
シンシンと降る雪の中。
小さな交差点にポツンと料理店がひとつ。
『注文の多い料理店』宮沢賢治著
読んだことあります。テレビアニメを観たこともあります。
なんか、この料理店がある佇まいに雰囲気が似ている気がしました。
◇ ◇
原作、未読なので、
わかりませんが、原作本を意識したのでしょうか。
1章、2章・・・と、
章ごとに話が進んでいきます。
特に、好きなのは5章以降ですね。
『非女子図鑑』でも好演していた月船さららさんと
今作の主人公、八嶋智人さんがメインになります。
そこに4章までに描かれている
他の登場人物が絡みあってきます。
“おとなのおとぎばなし”
石油ストーブ、木造アパート、急な階段。
暖色系のぼんやりした色彩と八嶋さん独特の無色感。
いつも主役を取れない劇団員、強気で滑舌よくて、
声大きくて、それなのに自分に自信を持てない月船さららさん。
とりたてて大きな出来事はおこりませんが、
色彩と、その2人が紡ぎあげる世界。そして音楽。
それだけで、なんだか、とっても、心が癒されるんです。
もうおとなのはずなのに、
手もにぎれないような恋心を
抱いてしまったり、亡き父親の
思い出を追い求めてしまったり。
やりたくても
気恥ずかしくて
できないこと、ってありますよね。
それを、スクリーンの中の人たちも
じつに、気恥ずかしそうに動かれる。
観ているこちらも恥ずかしくなるんですが、
同時に、代替性というのかな。自分たちの
替わりにやってくれている開放感のような心地よさが、そこにはあるのです。
そして、
気がつくと、
柔和な笑顔で、スクリーンを見つめている。
☆彡 ☆彡
そんな幸福な気持ちにひたる小生のうしろからは、
気持ちよく熟睡されているおじさんの高いびきが。
客電が点灯してからもしばらく寝ていました(苦笑)
他の皆さんも
帰るスピード速い、速い。
派手な出来事もありません。
大きな感動がくるようなエピソードもありません。
『わたし出すわ』とは
また違った、幻想的な函館を舞台に
訥々と話しが進みますので、笑いとか
涙を期待していた人には、物足りなかったに違いありません。
イコール「あぁよかったぁ」と喜びにひたっていた小生は、またもや少数派(苦笑)
『つむじ風食堂の夜』
小さな交差点。ひっそりとした路地裏。
あなたの町にも、あるんじゃないのでしょうか。
わたしの町にも、似た佇まいの定食屋があります。
一度、扉を開いてみてはいかがですか。
あなたにも、不思議な出会いが待っているかもしれませんよ(笑顔)