「時代を・一流を作り出しているのだという自負。」ファッションが教えてくれること とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
時代を・一流を作り出しているのだという自負。
仕事・自身の在り方への覚悟。
半端ないなあ。
もし失敗したら、全てを失う。
雑誌と写真集とは違う。自分の作りたいものを作っているわけではない。良い写真・記事でも、雑誌の流れにそぐわなければ…。”雑誌”としての完成度。それがすべて。
ワンマンなんだけど、各ページを手繰る時には購読者の視点も持たなければ、移り気な読者はすぐにそっぽを向く。その購読者たるや、片やファッションデザイナーをも含むクリエーターのプロ集団であり、片や気軽にファッションを楽しみ憧れる普通の人々だったりする。
そんな彼らの関心を少しでも外せばすぐに売上に跳ね返り、編集長の地位は簡単に他の人に奪われる。なんて恐ろしい。
時代を読む力。それが全て。
アドバイスを受け入れれば、雑誌に取り上げられればマーケットとしては成功するから、クリエーターもアナの言葉に耳を傾ける。でもクリエーターだって自分の感性を武器にしている。安易な妥協をすれば次の仕事はない。そんな感性と感性のぶつかり合いにも、堂々と立ち向かっていかなければならない。相手を納得させるだけのものを示さなければ、クリエーターから相手にされなくなる。なんとういうせめぎ合い!
片や、グレースは自分の仕事に酔うタイプ。自分の想いを表現したいタイプ。
グレースの世界に共感する人は付いてくるけど、共感しなければ…。クリエーターとしてはそれでいいのだろうけど。購読者数を誇る雑誌としては。なんて難しい。
そんなふたつの才能が出会い、切磋琢磨していくから、ものすごいものができるのだろう。
そして、その仕事に参加するスタッフも、アナに認められれば、雑誌に載れば、一流の証明。だから怯まない。食らいつく。結果的に、さらに高みへ。
そんな熱意を喚起させるのがアナの力。
良い仕事をしたいと思ったら、ここまで考えて考えて完成を磨きぬかないとダメなのね。
雑誌ができていく緊張・ワクワク感を追体験でき、
自分はどう生きたいの?
どんなふうに仕事をしたいの?と、
自分の生き方を振り返ってしまう映画です。