グッド・バッド・ウィアード : 映画評論・批評
2009年8月25日更新
2009年8月29日より新宿バルト9、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
主役3人のキャスティングはハマっていたが、ドラマは生まれず
タイトルを見て「あれ?」と思った人はかなりの映画通。そう、これはセルジオ・レオーネの「続・夕陽のガンマン」(66年/英題:The Good, The Bad And The Ugly)をパクッた韓流西部劇だ。
1930年代の満州(現在の中国東北地方)に舞台を移してはいるが、大筋はオリジナルと変わらない。賞金稼ぎ(Good)と抜け目のない泥棒(Weird)、そしてクレイジーなギャングのボス(Bad)が、日本軍が持っていた宝の地図を奪い合うというもの。なるほど、満州は無国籍アクションには格好の舞台だし、日中戦争のきな臭さもある。しかも、朝鮮半島は日本の植民地にされているのだから、満州浪人ならぬ韓流無法者が暴れ回れば、抗日戦線や独立愛国ドラマの芽も出てくる。と、思ったのだが、いつまで経ってもどんなドラマも生まれず、ただ派手な銃撃戦を繰り返すだけ。これではキム・ジウン監督はただ西部劇のドンパチがやりたかっただけなのねと思わざるをえない。それなら自分のストーリーでやればいいものを。オリジナルに対する敬意も、新しいアイデアも何もなくて、最後の決闘の構図までちゃっかりいただきで撮っているのが悲しい。
唯一楽しめたのはキャスティング。Goodのチョン・ウソン、Badのイ・ビョンホン、Weirdのソン・ガンホ、3人ともキャラクターにはまっていて、こういう役者が揃っているのは羨ましくもある。肝心のお宝は最後まで伏せられているが、これがあれば日本は太平洋戦争をしなかったハズと言える重要なもの。それにしては日本軍の対応がおざなりなのも気になる。もっと歴史を勉強しなくちゃね。
(森山京子)