劇場公開日 2009年11月6日

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スペル(2009) : インタビュー

2009年10月30日更新

スパイダーマン」シリーズの大ヒットで、ハリウッドにおけるトップクリエーターの地位を不動のものにしたサム・ライミ。彼が10年におよぶ構想を経て描く「スペル」は、平凡な銀行員・クリスティンが不気味な老婆に呪いをかけられたことで体験する地獄のような3日間を描く、衝撃映像満載のカルトホラーである。(文:編集部)

サム・ライミ監督インタビュー
「キャンプファイアーで聞くようなお化けの物語を、観客に体験してほしかったんだ」

恐怖と笑いの大渦にのまれること必至の、濃密な99分間
恐怖と笑いの大渦にのまれること必至の、濃密な99分間

死霊のはらわた」「ダークマン」などカルト的な人気を誇りつつ、「スパイダーマン」という商業的な大ヒットを成功させたサム・ライミ監督。なぜこのタイミングで再びホラーの原点に立ち返ったのだろう。

「そもそも僕はこういう物語が大好きなんだ。『弾ける幽霊物語』『飛び出すお化け』みたいな感じの作品がね。ホラーというのは怖くて面白くて、僕はいつもその単純さに惹きつけられる。これはシンプルなお化けの物語なんだよ。そして僕が作る映画にはたいてい特異な状況に陥ったごく普通の人々が登場する。この作品でも主人公のクリスティンはちょっと間違った選択をしただけで、理不尽で異常な状況に追い込まれてしまう。だからこそ観客はキャラクターに共感するし、親近感を持つんだ」

「スペル」撮影中のサム・ライミ監督
「スペル」撮影中のサム・ライミ監督

主演のクリスティンを演じているのは、「ホワイト・オランダー」で里親の下を転々とする少女役を演じて注目を浴びたアリソン・ローマン。監督は共同脚本を手がける実兄のアイバン・ライミとともに、後ろめたさを感じながらも出世欲やトラウマを抱える、多面的なヒロイン像を作り上げた。

アリソン・ローマンとの仕事はまさに『喜び』だった。彼女は知的で才能豊かな女優だよ。アリソンという女性がスクリーンに登場した瞬間、観客は彼女に好感を持つ。僕はこのキャラクターに対して観客に共感してほしかったから、この役に彼女をキャスティングすることはとても重要だったんだ。アリソンは本当によく耐えていたよ。戦わせたり、泥だらけにしたり、血みどろにしたりしたけど、彼女は決して音をあげず、その度にもっと強い心構えで向かってくるんだ。本当に彼女の忍耐力とプロ根性に驚かされたよ」

ヒロインの驚異的なガッツは演者ゆずりか
ヒロインの驚異的なガッツは演者ゆずりか

劇中で何度も戦うこととなるクリスティンと不気味な老婆ガーナッシュは、ホラー史に残るであろう名バトルを文字通り体当たりで繰り広げている。特にクリスティンを執拗に襲い続けるガーナッシュの迫力と生理的嫌悪感は凄まじい。

「演出の作業はとてもシンプルで、まず脚本に基づいてキャストとシーンを話し合う。キャラクターの目的は何なのか、どんなことを感じるのか、そして特異な状況下でどのように行動するのか。僕が分からないことは2人の意見を参考にしたんだ。アリソンもそうだけど、老婆を演じたローナ・レイバーとの仕事も素晴らしいものだった。とても一生懸命に取り組む人なんだけど、彼女は年配だからこの役の肉体表現はとても大変だったと思う。小さな車の中で、煌々とした照明の中で、来る夜も来る夜も激しく争うシーンを演じなくてはならなかったんだからね。どのテイクもぐったりするほど疲れるんだけど、彼女は気持ちを入れ替えて次のテイクに挑んでくる。彼女は愚痴ることなく持てる全てを出してくれた。真の戦士だね」

怖いのに思わず吹き出してしまう、2人のバトルシーン
怖いのに思わず吹き出してしまう、2人のバトルシーン

そんな2人の壮絶なバトルは、おぞましくも笑えるシーンに仕上がっている。恐怖を体感させながら同時に笑いを巻き起こすという演出が、実に妙味だ。

「ホラーとユーモアは非常に近い関係にあると思う。観客にとってサスペンス溢れるシーンを作り上げ、観客もそれを大いに期待し、ショッキングで恐ろしいものを提供して、観客は飛び上がって叫ぶ。それはジョークを話すのとよく似ているよね。観客に期待させ、オチがくると観客は叫ぶ代わりに笑う。だからその2つを混ぜ合わせるのは簡単だと思ったし、とても自然だと気づいたんだ。僕は怖い時に、恐怖心から笑い出すことがしょっちゅうある。だから両方の相性はとてもいいことに気づいたんだ」

最近では「『スパイダーマン』のサム・ライミ」と形容されることがほとんどだが、ホラーファンにとっては今でも彼は「『死霊のはらわた』のサム・ライミ」なのである。

「兄のアイバンと僕がこの脚本でしたかったこと、そして僕とこの映画を作ったスタッフたちが製作中に考えていたことは、本当に楽しくて薄気味悪いお化けの物語を語ることだった。キャンプファイアーで聞くようなお化けの物語を、観客に体験してほしかったんだ。少しだけゾクゾクして、少しだけクスクス笑えて、時に飛び上がって叫べるような映画。そして最後には、背筋が寒くなって『ワオ!』と驚いて終わるような映画がね」

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