「列を乱すことの恐怖。」パレード(2010) ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
列を乱すことの恐怖。
以前から気になっていた作品だったので、わりと近場で
観られて良かった~なんて思ってはみたのだけれど…。
まぁ…なんというのか、怖いうえに後味の悪いスリラー^^;
観終えてなるほど、そういうことか。と思わされると同時に
このタイトルってどういう意味なの?と考えてみたりする。
ちなみにいつも通り原作は読んでいない。
「パレード」って見ている方は楽しいものだが、遣っている
それぞれには隊列を乱さないため周囲に合わせるという
暗黙のルールがあるように思う。最後までその雰囲気を
損なわずに楽しく終えたいという使命感?のようなものが
今作では生活の中でおかしな連帯感を生み出したことで、
あの、こわ~い結末へと繋がっている気がするのである。
いや~なんだか^^;これからはパレードを見る度に今作を
思い出してしまって、暗鬱とした気分になったりして…x
確かにWOWOWが作りそうな話だなぁ、なんて思いつつ、
冒頭から何かあるんじゃないかの雰囲気がプンプン漂い
まったく目が離せなくなる。この人達、単なる共同生活
とはいえ、他人と関わっていないというわけでもないし、
一応親身に誰かの相談に乗ったりもしているので、特に
冷淡な印象は受けない。おかしな行動をとっているのも、
ある意味人間の二面性を映しているのであって、さほどの
違和感は受けなかった。そういう彼らのなんとな~く楽な
生活と並行して起こる連続暴行事件と男娼サトルの登場。
ここで何かが変わるのか?と思いきや、そうでもない^^;
行定勲の演出は、それぞれの人物紹介をしてはいくが、
その映像も深く切り込んだ彼らの内面を描くものではなく、
うわべの生態をサラリと見せていくので却ってそれが怖い。
演出までもがこの隊列から抜きんでようとしていないのだ。
昨今の人間付き合いとはこんな風に、とにかくストレスを
溜めずに他人と最低限の範囲で関わり、嫌な話や説教は
さておき、とりあえず楽しい話で盛り上がっておけばOK!
当たり障りない関係を保つことで自分を安定させなければ
やってらんないんだよ、こんな毎日。って…私にも分かる。
まさに職場での光景を観ているかのようだった(爆)
しかし、楽に見える生活にも次第にルールは確立される。
結局何処へいっても自分で自分をコントロールしなければ
生きていくのは困難だ。何かのジレンマで抑制が効かず、
こんな時こそ腹を割って自分を叱咤する人間が必要なのに
気付いたらそんな人間は1人もいない。こんな寂しい状況を
作りだす前にパレードを中断して考える必要があるのでは?
と注意を促してくれる作品だったようにも思う。
なにか大きな事件が起きてからでは、常に遅いのだから。
(林遣都、見事なイメチェンに成功。今回は夜の運動選手か)