「見ざる 言わざる 聞かざる」パレード(2010) septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
見ざる 言わざる 聞かざる
う~ん、難しいなぁ
わかったような、わからないような
『今度は愛妻家』と同じ監督の作品とは思えないなぁ
~~~
エンドロール中、
なんともいえない
押し黙った重い空気に包まれていました。
客電点灯後、難解な作品のヒントが欲しくて
劇場に貼られていた雑誌などの切り取りを熟読しに行ったのですが、
同じような感情にとらわれた若者が多数いたようで、珍しいことに、
貼紙閲読待ちの列ができてしまうほどでした。
◇ ◇
4ヶ月間だけでしたが、
私は4名でルームシェアをした経験があります。
今作のように個人が独立した形でなく、
掃除係、洗濯係、料理係と担当を割り振って
朝食・夕食は、自然と同じ時間にとるようになっていました。
2勤1休の住み込みバイトでしたので、
日中、仕事の人は現場へ向かい、休みの人は、各々、自由行動をしていました。
住み込み場所が、伊勢神宮の内宮付近であり
移動するにも車がなかったため、上り下りの起伏が激しく
町の中心部にでるのも一苦労。当時は、近所にコンビニもなく
あるのは地域密着のスーパーだけ。腹をすかし定食屋によろうものなら
ペラペラのまだ中身が冷たいコロッケが平気な顔をして出てくる。さすがに
丼に指を突っ込んで、それを指摘すると「大丈夫、指熱くないから」と笑顔で
うどんを運んでくるオバちゃんはいませんでしたが(苦笑)
だから、仕事中以外の行動は、お互い干渉なし。
ただヒトツ決めたルールは、女性を連れ込まないこと、それだけ。
一つ屋根の下に4ヶ月間暮らしていたけれども、
私自身、干渉されるのは嫌だし、そのため自然な流れとして
同室の他の人に対しても「休みの日になにをしていたか」なんて
質問をすることもなく、まさに現在でいうならチャットルームのような暮らしを送っていました。
ルームシェア終了後に、
リーダー格の男性が、あるコンパニオンと
付き合いをしたくて、狙っていたことと
(そんなこと知らずに短期間だけど、私はその子とつきあっていた)、
フェミニン系の男性が、夜にホストの仕事をしていたこと、などを知った。
普通に驚いたふりをしたけれども、薄々気づいていたし、
気づかないふりをしていたほうが、お互い気を使わずに
生活できると思っていたから、シェア終了直後に、怒気を交え、
その期間中、なにもなかった先輩が、私に熱弁してきた姿には、
なにか別世界に浮遊しているようで、同調するよりも、むしろ憐れで仕方がなかった。
そんなパレードを歩んだ残りの3人とは
それっきり一度も会っていない。別に、会いたいとも思わない。
◇ ◇
今作を観ながら
そんな昔に思いを馳せた。
だとすると、
スクリーンに映っていないところを如何に見抜くか、
スクリーンに映っていない所になにを感じさせるか、
それが、今作にとっては、重要な鍵になるんじゃないのかな、と。
今作、
5人が5人、すべてを知っているかどうかは
さだかではないが、同じ空気を吸っていれば、
目には見えなくても、見えてきてしまうものはあるわけで、
「自分が治せないなら他人のかさぶたを剥がすな」ではないけれども、
相手のためでなく、自分のために、よからぬことをおよぼしそうなことは、
それがたとえ、社会通念上反することであったとしても、無意識か有意識かは
別にして、気づかないふりをする。だって、それが己の身を守ることだから。
☆彡 ☆彡
“現代の縮図”
そういうと簡単だけれども、
今作には人間の本質的な部分が描かれていると思う。
このような作品に若い世代を中心に、
8割も座席が埋まるのを素直に喜ぶべきなのかどうか、
よくわからない。そして、その8割のうち何割の人が、
今作を鑑賞して、なにか、ハンガーに引っ掛かるものがあったのか。
よくわかんなかったね
それだけで終わってしまっている人ばかりだと悲しい気もする。
ルームシェアをしているかどうかは別として、
人間、気づかないうちに、幾つかのパレードに参加しているのだと思う。
あなたは、隣の人が、どんな人間で、どんな職に就いている人か、知っていますか?